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 降りた先は随分な田舎町だった。しばらくは暗い国道を走っていたが、暗闇へ向けて右折すると道なき道へと突入した。  車体はガタガタと大きく揺れ、両手を張って耐えないと尻が浮きそうだ。 「ゆ、揺れる!」 「じきに着く。我慢しろ」  何の目印もない場所でブレーキが踏まれ、唐突に車が止まる。ライトとエンジン音が消えると代わりに波音が耳に届いた。 「海……?」 「そうだ」  暗い車内でポッと炎が灯る。煙草に火が着くと光は消え、見えない煙だけが漂った。  目が慣れてくると隣の人の輪郭が浮かび上がる。守雄は窓の隙間に煙を吹くだけで、それ以上は何もしようとしない。 「こんな所で何すんの」 「何って、何がしたいんだよ」  そう切り返されては二の句が継げない。悠真は暗闇に乗じてそっとシートベルトを外した。 「ユーマ」  名を呼ばれてハッとする。いつの間にか煙草を吸い終えていた守雄が悠真の上に乗り上げてきた。 「な、何……?」 「お前も、葬儀場で俺のこと聞いたんだろ」  大きな手が二つ首に絡みつく。 「俺がここに何しに来たか知りたいか?」 「んぅ……!」  容赦なく力が掛かり、悠真の喉がぎしりと鈍い音を立て締めつけられる。 「殺しに来たんだよ」  酸素が遮断された悠真は味わったことのない苦しさに呻いた。
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