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 暗闇で一人にされた悠真は混乱する頭をくしゃりと掴んだ。息はまだ整わず、状況も整理できず、ただ感情だけが激しく揺さぶられる。 「なん、何なんだよあいつ……。わけ分かんないよ!」  怖い。そう思う以上に最後に見た悲しい笑みが胸を裂くように痛い。守雄が殺しに来たと言ったのは、きっと守雄自身のことだ。  気づけば悠真は勢いよく外へと飛び出していた。視界いっぱいに暗い海が広がり、男の影がそこへ吸い込まれようとしている。 「ちょっと待てよ!!」  柔らかな砂浜を蹴り、全力で駆ける。ザブザブと波を踏みつけると海面はすぐに股下まで迫った。 「勝手なことばっか言って、こんなもの、一生俺に引きずらせる気かよ!!守雄!!」  悠真は追いついた背中を掴み、力任せに引き倒した。二人揃って海水をかぶり波間に落ちる。守雄が咥えていた煙草が水の底に吸われて消えた。 「ユーマ……?」  満点に輝く星空の下で、びしょ濡れになった悠真が引き寄せるように守雄の胸ぐらを掴んだ。
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