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「俺はまだ、あんたの本当の声を聞いてない!」  手は震え、それでも悠真は守雄の目を真っ直ぐ見ながら声を張る。 「あんただって本当はもっと言いたいことがあるんじゃないのか?だから俺をこんな所まで連れてきたんだろ!?」  守雄の目が大きく見開く。悠真は息を荒げながらも逃さぬように力を込めた。 「あんたが悪いかどうかなんて……俺だって白か黒なら迷わないけど、西浦家(あいつら)の悪意も、あんたの感情も、どっちも黒すぎるんだよ!黒と黒の中で判断しろっていうなら、せめてあんた自身の事をちゃんと俺に教えてくれよ!!」  ザザンと大きな波が二人の体を押し流す。 「わぷっ!」 「悠真……!!」  海の下に消えた悠真を守雄が咄嗟に引き上げた。ぐっと唇を噛み、悠真を掴んだまま浜辺へ向けて歩く。浅瀬で離してやると、悠真は尻餅をつきながらもまだ目を逸らさず見上げてきた。長い沈黙が続いた。 「……恭子ちゃん、が」  口を開いたのは悠真だ。 「こめかみの傷をあんたにやられたって言ってた。あれは本当なのか?」  守雄の目がはっきりと揺らぐ。悠真がいつまでも聞きの姿勢を崩さずに待っていると、濡れた髪をかきあげ、足元を撫でる波の端を踏み、ゆっくり隣に腰を下ろした。
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