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東京から静岡までは車で約三時間。早朝からサッカーボールを追いかけていた悠真は、後部座席に身を沈めうつらうつらしていた。前に座る父と母の会話がカーステレオに乗せて自然と耳に入ってくる。
「……だから、姉とはもう二十年以上も会ってないの」
「そういえば君のご両親の葬式でも見なかったね」
「来ても私が追い返したわよ!家のお金を持ち出して蒸発した人なんてもう家族と呼べないわ。正直、今日行くかも迷ったくらい」
どうやらかなり問題がある人のようだ。悠真はぼんやりと母に似た人を思い浮かべながら夢に落ちた。
午後六時過ぎ、車は予定通り葬儀場の駐車場へと辿り着く。
「悠真、起きなさい」
「んー……」
「ほら、しゃんとして。今日はいつもの親戚と違って知らない人ばかりなんだから」
あくびを噛み殺しながら外に出れば、大きな夕日が山の向こうへと沈みかけていた。茜色に照らされた葬儀場に入ると『西浦家』と貼られた看板が真っ先に目に留まる。喪服を着た人たちの間を歩くとジロジロと見られた。
母が受付で名前を書いていると、喪章をつけた男が駆け寄ってきた。
「宮坂さん!ああ、すみません遠いところをお越しいただいて。私が西浦豊です」
母は父に「姉の旦那さんよ」と耳打ちをしてから頭を下げた。
「わざわざご連絡ありがとうございました。あの、姉の瑠美とはずっと連絡が取れていなかったもので、詳しい事情をお伺いしても?」
「勿論です。よろしければ旦那さんもご一緒に」
母は硬い顔で振り返った。
「悠真、あんたはここで待っててちょうだい」
「えっ」
「すぐに戻るから」
有無を言わせず、母は父だけを連れて足速に行ってしまった。
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