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 悠真は仕方なく息を潜めて壁際に立つ。慌てて出てきたせいでスマホを家に忘れたのが痛手だった。何となく辺りを見回していると、西浦の親戚らしき人たちが露骨に母の陰口を叩いていることに気づいた。 「ねぇ見た?さっきの瑠美さんの妹だそうよ」 「見たわよぉ。美人だけど、やっぱり瑠美さんそっくりの派手顔ねぇ」 「あの人もどうせ夜のお仕事してるわよ」  年配の女達が口元に手を当て、嫌だ嫌だと言いながら笑い合う。 「なんだよ、あれ」  悠真が不機嫌に舌打ちしていると、母と同年代くらいの女たちがこっちに寄ってきた。 「君、瑠美さんの甥っ子よね?」 「高校生?どこから来たの?」  にこにこと話しかけてくるが、すっかり気分を害した悠真はぶっきらぼうに「東京」とだけ答えた。 「あぁ、そう。どうりで……」 「可哀想に。こんな田舎まで連れてこられて嫌だったでしょう?お母様も一人で来ればよかったのに」 「この制服って私立?すごいわ。うちじゃ到底通わせてあげられないもの。お父様は何のお仕事されてるの?」  嫌な気分だった。一言一言に毒があるような、それでいて無遠慮に撫でられるような不快感だ。  悠真が辛抱強く耐えていると、式場の出入り口から突然叫び声が聞こえてきた。
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