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 恭子は悠真の母の話を熱心に求めた。普通の母親なので特段すごい話もないが、それでも羨ましそうに目を細めて聞いている。 「悠真くんはいいなぁ。私の本当のママはね、六年前に病気で死んじゃったんだ」 「え、じゃあ……」 「うん、パパが再婚して来てくれたのが今のママ。でも誤解しないでね。私は新しいママも大好きだったの。すごく綺麗で、優しくて、それに私の言うことなんだって聞いてくれたのよ。でも……」  恭子が膝の上で拳を握る。 「ママの連れてきたあいつだけは、大っ嫌い」  恨みがましげに語られたのは、瑠美の連れ子のことだった。名は守雄(もりお)。親の再婚当時十八であった彼は、見るからに粗野で素行も悪かったようだ。 「これだって守雄のせいよ」  恭子が黒い髪をかき揚げ、こめかみに残る傷を見せる。悠真はどきりとした。 「まさか、その人がやったの?」 「うん。だからパパがあいつを家から追い出してくれたの。それからはずっと平和だったわ。平和、だったのに……」  恭子の瞳にみるみる大粒の涙が溜まっていく。 「ママね、通り魔に殺されたんだって」 「え!?」 「でもやったのは絶対あいつなの。ママが殺されたのがあいつのアパートの近くだなんて、絶対におかしいもの。あいつは追い出されたことを恨んでママを呼び出して殺したんだわ!今日だって事情聴取されてるはずだから来ないってパパが言ってたのに!」  悠真は煙草の匂いがした男を思い出し、あれが恭子の言う守雄だったのだと理解した。
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