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 あまりに突然の出来事に悠真は大混乱に陥っていた。  辛うじて分かるのは見知らぬ車の助手席に座っているということだけだ。恐る恐る隣を見れば、ハンドルを握る男が気怠げに煙草を咥えていた。 「あ、あの……」  男は横目で見るだけで、少し開いた窓に紫煙を吹く。 「守雄……さん?」  間違いない。あの時すれ違った男だ。悠真の脳裏に人殺しという言葉が蘇り、背中がゾッと冷えた。  フロントガラスの向こうで信号が赤に変わる。悠真は反射的に体を起こしドアハンドルに手を伸ばしたが、それを阻止するように守雄に手首を掴み上げられた。 「うっ!」 「危ねえだろ」  守雄は助手席のシートベルトを引き伸ばし、悠真を縛り付けるように金具をバックルへ差し込んだ。 「ちゃんとベルトしてろ。この先は高速だ」  低い錆声(さびごえ)は威圧的で、カチンと鳴る微かな金属音に逃さないと言われた気がした。  車は再び動きだす。どうすることも出来ぬうちにゲートをくぐり、無情にも高速道路へと入った。
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