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松子さまは二つのジンライムを一気に飲んでしまった。吾輩は松子さまの足元にいき、体を寄せる。
「シロちゃん、ベランダに出ましょ」
松子さまはくまのプーさんのスリッパをパタパタいわせて、ベランダに出る。大きな満月に照らされて、松子さまの顔が赤くほてっていた。
「私酔ってるかしら、シロちゃん?」
はい、酔ってますよ。
「ジンライムのようなお月さまみたいね、知ってる?」
いいえ、知りません。
「私今日あの人に乗られようとしてたの」
そんな話やめてくだい。
「だって、あの人のバッテリーが…だったもの」
ニャー!吾輩は思わずジャンプして、松子さまを少し引っ掻いてしまった。
「痛っ!」松子さまの白い太ももに少し血が滲んでいた。
すいません、松子さま。悪気はないんです。この爪が悪いのです。
「そうね、シロちゃんも男の子だものね…」
松子さまはまたテーブルにもどり、今度もまたジンライムを用意して、ゆっくりと時間をかけて飲んだ。スマホをずっと見つめたままだった。栄二からの連絡を待っていたのだろうか。ときどき目に涙を浮かべていた。
吾輩は松子さまの足元にうずくまり、寄り添い、そばにいることしかできなかった。
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