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3.バンド側はどう思ってる?
「静粛に!」
背後に隠していたガベルを鳴らす心愛。ガベルとは、洋画で裁判官が鳴らすハンマーのようなものだ。
実際バンド側はどう考えているのか。やはり自分のバンドのTシャツをきてほしいのか。
フェスは自由度が高い。対バンなら自分が応援する側のバンTだろう。
ならば単独ライヴではどうなのか。
「んー。バンドとバンドメンバーの見解は一致するとは限らないからなあ」
「結局、人それぞれになっちゃうってこと?」
風花は不満げだ。
「言い方がわかりづらかったね。メンバー個人の考えとは別に、バンド公式見解があると言えばいいかな」
「やっぱり、自分のバンTじゃないと怒る人もいるのかな?」
さすがにライヴ中に怒るアーティストはなかなかいないと思うが……。
「アフターパーティーや楽屋挨拶の時は気を使うね」
すると心愛が目を見開く。
「りくさんてそんな人脈あるんですか?」
「俺じゃないよ、南さん。何回か連れていってもらったんだ」
「気にしないアーティストもいる?」
「もちろん!」
俺は即答する。まるでロックバーで会ったかのように「俺もそのバンド好きだよ」ときさくに話しかけてくる人もいる。
「ってことは、逆に……?」
今にもガベルを鳴らしそうな心愛を前に、俺は苦い思い出を振り返る。
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