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4.結局何着てく?
そうだ。一口かじられたりんごを見るかのごとく怒るアーティストもいるのだ。
「公式見解とやらは、どうすればわかるの?」
ソファに深く座り直して、風花が足を組む。
「ライヴ中、自分のバンTを着てるファンを見つけて、ステージ上から指をさして喜ぶようなら決まりだな」
俺がYOU! YOU! YOU! と指さすと風花が吹き出す。俺はさらに、風花のバンTの背面に描かれたツアー日程に向けて、サムアップする。
だが、心愛はガベルを握る。
「私はやはり、浮いてしまうんでしょうね」
「そんなことないよ! 平日なら仕事帰りにスーツで来る人もいるし、パーティーにはオシャレしてくる人もいるから!」
またガベルを鳴らされたら大変だと、俺は心愛をなだめる。
「そして結局、買って応援ってなるのね」
風花はポンと手をたたき、納得する。
確かにそれはそうなのだ。
バンド側としては、ライヴに来てもらえるだけでも十分嬉しい。さらにTシャツなどのグッズを買ってくれるファンはありがたい。
俺たちファンは、自分なりの伝え方で応援する。
「仮に、だよ? ライヴ会場の全員、同じバンTを着てヘドバンしていたらどう思う?」
……それは宗教というよりカルトだよ。
コーン! 心愛がガベルを振りかざす。
【完】
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