4.結局何着てく?

1/1
前へ
/4ページ
次へ

4.結局何着てく?

 そうだ。一口かじられたりんごを見るかのごとく怒るアーティストもいるのだ。 「公式見解とやらは、どうすればわかるの?」  ソファに深く座り直して、風花が足を組む。 「ライヴ中、自分のバンTを着てるファンを見つけて、ステージ上から指をさして喜ぶようなら決まりだな」  俺がYOU! YOU! YOU! と指さすと風花が吹き出す。俺はさらに、風花のバンTの背面に描かれたツアー日程に向けて、サムアップする。  だが、心愛はガベルを握る。 「私はやはり、浮いてしまうんでしょうね」 「そんなことないよ! 平日なら仕事帰りにスーツで来る人もいるし、パーティーにはオシャレしてくる人もいるから!」  またガベルを鳴らされたら大変だと、俺は心愛をなだめる。 「そして結局、買って応援ってなるのね」  風花はポンと手をたたき、納得する。  確かにそれはそうなのだ。  バンド側としては、ライヴに来てもらえるだけでも十分嬉しい。さらにTシャツなどのグッズを買ってくれるファンはありがたい。    俺たちファンは、自分なりの伝え方で応援する。 「仮に、だよ? ライヴ会場の全員、同じバンTを着てヘドバンしていたらどう思う?」  ……それは宗教というよりカルトだよ。  コーン! 心愛がガベルを振りかざす。   【完】
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加