1.バンT着てく?

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1.バンT着てく?

「引き続きロックTシャツの話になります。今回はより幅を狭めて、バンT問題です」  再び心愛(ここあ)が司会進行する。  俺たち3人は、南さんのマンションのリビングにいる。結成40周年を迎えるEUROPEのバンTにジーンズを履いた俺と、同じく結成40周年のBon JoviのバンTにミニスカの風花(ふうか)がソファに座る。  赤の差し色を入れた黒いワンピースを着た心愛は、ダイニングチェアにちょこんと腰かけている。テーブルに何かを置いているようだが、隠れて見えない。  なお今回も、南さんは仕事中にて欠席である。 「私はロックTシャツは着ませんし、ライヴにも行ったことがありません。実際のライヴ会場はどのような様子なんですか?」  俺はバンTに描かれた白黒の鷲のイラストを伸ばす。 「まずは……そうだな。ライヴ会場をどうとらえるか。とにかく自分をアピールする客が多いからな」 「アピールって、こんな?」  まだライヴを観に行ったことのない風花が、1984年ツアーのTシャツを見せつける。 「自分の好みはこうだぞって。同系統のジャンルのバンTを着てくるやつもいるし、別ジャンルもいるな。それに、やたらマニアックなバンドのTシャツを着てくるヤツも」  ハイハーイ! と風花が手を挙げる。 「なんとなくわかるよ! ロゴが読めないバンドとかでしょ?」  俺はゲッチュのポーズをとる。 「そうそう。浮いてしまうが、信念なのか優越感なのか……」 「その人、ベーシストなのかもしれませんね」  本編『明日の鎖』を読んでいないとわからないマニアックなネタをぶちこむ心愛。 「どのみちメタルのライヴ会場は真っ黒になるよ」
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