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「友梨佳さんは、いつも良い車に乗ってるから」
秀哉は山野とも知り合いで、呼ばれてきたと告げる。
「それで車内を物色ですかな」
警察官は疑いの言葉を緩めない。確かに、秀哉と紗月は不審人物だ。
紗月が何か思いついたように、それより、と話す。
「私たちを疑ってるんでしょ。どのようにしたか、当ててごらん」
挑発するけれど、上手くいけば捜査内容を聞けるはず。
「何があったんです? この車とは関係ないでしょ。捜査が混乱するだけと思うが」
秀哉は助言も忘れない。型通りの「警察官のお仕事」は何回もみてきた。
二人の警察官も、重要案件がなにか気づいたらしい。
「状況確認と行こうか」
警察官たちに促がされて、建物へ入っていく秀哉と紗月。
大方の聞き取りは終わり、ソファーに座る山野と友梨佳。
鑑識もきて騒々しくなる。
山野はのんびりしている。
「泥棒だよ。すぐ終わる。肉は持ってきたかな」
「朝市で神戸牛が安かったので。そのまま、ここへ来ました」
丸屋根の音楽室で、久しぶりにトランペットでもいじろうと思ってもいた。山野は教えるのが好きなタイプで、丸屋根の音楽室が開放もされている。
紗月は警察官から聞き出そうと企んでいて、奥の金庫や、机周りを案内させてもらっている。警察官は検証のつもりらしいけれど、紗月は状況を理解したようだ。
秀哉も山野との話でわかってきた。
何者かが後ろから山野をつかまえて、玩具の手錠をかけたらし。それで机に繋がれる。
相手は機械音のような音声で、暗証番号などを聞きだしたという。相手の顔や声は知らないらしい。
友梨佳は音楽室で朝からピアノ練習をしにきていたらしい。それで、山野へ会いにコンクリートの建物へいった。そこで、手錠で繋がれた山野をみたというわけだ。
「それで、泥棒。強盗だと思うが。大金はないでしょ。書斎だし」
秀哉は何回か、ここへも訪れたけれど、金庫があるのも気づいてなかった。
「一千万円。妻のへそくりだよ」
「先生! 簡単にいうけど。大金だぜ」
呑気に構えすぎている山野。どうせ、なかった金、との雰囲気も感じ取れた。
「探偵大学生くん。いたのか」
入ってきて声をかけたのは津川省太刑事。
山野は困った顔。早く終わらせたい思いが伝わる。
「泥棒だよ。用事もあるから、さっさと済ませてくれ」
友梨佳へなにか合図すると、お互いに頷き合う。
秀哉も、別件で来たはずと予想する。いまの状況は刑事の出番でもないのだ。
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