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「遺失物は見つかった。解決だな」
津川が山野へ声をかける。
「そうだ。これ以上は警察に関わりもない」
そんな簡単なモノか。だけれど、津川の目的は泥棒をみつけることではないらしい。
「中身は予想もつく。どうだい。隠し金庫に何が入っている。協力してもらえないか」
「どうせ言い逃れされる。賄賂も不起訴になったしな。こっちの金なら、こっちで勝手に使う。盗まれたことにしたら疑われない」
山野は警察を信用してないらしい。盗まれたといっても犯人は存在しないし、迷宮入りになる計算だったのだろう。
「やはりあの引き出しを開けるべきだよ」
紗月は、証拠はあると確信しているらしい。
「捜査権はなー。どうします」
秀哉が津川に訊ねる。
「言えるわけがない。ただ。盗難事件は解決した。もしかして見落としはあるかもしれない」
津川は手で何かを開ける仕草をする。
「なるほどね。泥棒が、本当は引き出しを開けていたかも」
紗月は分かったようにうなづく。
山野は何が重要か気づいたらしい。
「たぶん、引き出しに、大切な何かが入っている。お利口な泥棒さんだ。あの、南京錠ならあけられるだろう。玩具だし。そうか、開いていた気がするな」
ちょっと調子に乗っている。秀哉と紗月が探偵ごっこをしているのも知っていた。
さて、この茶番の後始末というか、山野は警察へ再び事情を説明する。秀哉と紗月はコンクリートの建物へ入って行った。
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