臨死体験

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俺が、カタコトながらも、大人たちと会話ができるようになった頃、両親の前で こんな話をしていたらしい。 『けんえー、ママからオギャーしたら、お空にいったの。そしたら、おじちゃん、メッしたから、え~んしたの。』 といって、泣き真似をしていたという。 親は、俺がこの話を始めた時、慌ててスマホを起動させ、録画している。 今でもその時の映像を時々見ては、 「この頃の健栄は、可愛かったのよねぇ」 と、俺を恨めしそうに見てくる。 俺も、過去に一度、見せられた事があるが、何を言っているのか、全くわからないし、言っていることが分かったとしても、何の話をしているのか、さっぱりで。 その時、ようやく俺が瀕死状態で生まれたという事を知った。 つまり、幼き頃の俺の呟きは、こういうことだ。 瀕死状態で生まれた俺は、一度、いわゆる死後の世界を彷徨ったらしいが、“おじちゃん”と呼ぶ何かが、多分、俺のあの世行きを阻止したって事なんだろうと思う。 これが、俺の臨死体験。
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