1人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が、カタコトながらも、大人たちと会話ができるようになった頃、両親の前で
こんな話をしていたらしい。
『けんえー、ママからオギャーしたら、お空にいったの。そしたら、おじちゃん、メッしたから、え~んしたの。』
といって、泣き真似をしていたという。
親は、俺がこの話を始めた時、慌ててスマホを起動させ、録画している。
今でもその時の映像を時々見ては、
「この頃の健栄は、可愛かったのよねぇ」
と、俺を恨めしそうに見てくる。
俺も、過去に一度、見せられた事があるが、何を言っているのか、全くわからないし、言っていることが分かったとしても、何の話をしているのか、さっぱりで。
その時、ようやく俺が瀕死状態で生まれたという事を知った。
つまり、幼き頃の俺の呟きは、こういうことだ。
瀕死状態で生まれた俺は、一度、いわゆる死後の世界を彷徨ったらしいが、“おじちゃん”と呼ぶ何かが、多分、俺のあの世行きを阻止したって事なんだろうと思う。
これが、俺の臨死体験。
最初のコメントを投稿しよう!