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森の中を走る
簡単に終わるはずだった。
孤児院の子供のために、薬草をとってくるというクエスト。
突然の依頼っていうのもあって、十分に装備を整えて来なかった事が悔やまれる。
安請け合いなんてするんじゃなかったと、数時間前の自分を呪いたくなる。
走りながらナイフを放つ。
その刃は真っ直ぐに飛び、狼の眉間を打つ。
残りは8本。ほんっとありえない。
追ってくる気配は6つ。
生き残れる可能性は、たぶん七割くらい。
縄張りに入っただけで、そんなに怒ることないのにさ。
急停止。振り返りながら、背後にいた一匹に向かって投擲する。
それは狼の足を打ち、また一つ、脱落者が生まれる。
即座に地を蹴り、さっきとは別の方向に走る。
残弾7。このペースなら、いける。
記憶の地図を頼りに、木々の隙間を縫うように走る。
目指すのは、木々を切り出すための伐採キャンプ。
夜は無人だけど、開拓された空間は人間のテリトリー。そこまでいけば、たぶん狼も襲撃を諦めるはず。
もう一度急制動をかけ、前に出た一匹に刃を投げる。
腹部に命中。致命傷にはなってないけど、気勢を殺ぐ効果はあった。
その一匹は悲鳴をあげ、森の中に消えていく。
残る気配はあと3つ。
すぐに飛びかかってくる様子はなく、伐採キャンプは近い。
勝負にでるには、十分な距離。
とっておきの光魔法の術式を仕掛け、回れ右して伐採キャンプに向かう。
一瞬の間を置いて、背後で光が瞬いた。
眩い光を放つだけの、目眩ましの魔法。
背後から狼たちの悲鳴が聞こえ、森の木々が途切れて、視界の中に整地された空間が広がった。
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