白と黒

1/1
前へ
/34ページ
次へ

白と黒

「覗きなんて、いい趣味ね」  小さなアパートの屋根の上に、白いローブの女が現れた。  女の隣には黒いローブの男の姿。目を閉じて微動だにせず、じっと図書館を“見て”いる。 「観察と言ってもらおうか」  目を開き、男は言う。“見て”いた事を否定はしない。 「面白いものでも見つかったの?」  女の問いに、男は答えない。 「そう。見つかったのね」  無言の肯定。女はそう解釈した。 「少しは素直になったらどうなの?」  女は言う。  男は何も言わず、再び瞳を閉じた。 「ほんと、素直じゃないわね」  女は呆れた口調でそう言い残すと、姿を消した。  残された男はひとり、何も語らず、ただ瞳を閉じていた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加