五月の黒

ドッグ２

　太陽フレアの影響で月基地は地下にあるので、ドッグから出撃する時はカタパルトに乗って射出される。カタパルトは重要施設で個人任せの機体整備と違い、整備員さんがいる。整備員さん用の個室は料理のできる休憩所になっていて、各機体の説明を終えたレミラーラが引き上げてくる。

「隊長は料理されるんですか？」

ダンデライオンの魔女と渾名されるだけあって、レミラーラは煮物関係が上手。３０分ほどでコーンポタージュが出来て、ウィザと整備員のメンバーに振舞われる。

「他のレパートリーはデミグラスシチューにクリーム煮にハッシュドチキンね」

そちらのメニューは食事になってしまうので、休憩時間の時は作らない。それと全てのお肉は鳥ゲージで生産できるチキンに限定されていて、牛肉や豚肉は使えない。

「畜産もされるんですか？」
「あー、やるのは調理だけで、飼育は専門の人がいるのよ」

コーンポタージュの空の器が流しに置かれると、洗い物担当になったウィザは月の水道水で洗い始める。

「月の水って汚染水じゃないんですか？」
「あー、間違いなく汚染水だね。コンポタは地球から取り寄せた水で作ってるから安心してね」

カップに水分は残らないけれど、ここでの長い生活は身体に悪そうである。