謎の味方機

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謎の味方機

 人類は月に進出し、静かの海と呼ばれた一帯もいつしか騒がしい戦場と化した。騒がしい戦場と言っても月に大気はなく音は伝播しない。ただ見た感じが騒がしいだけ。散乱する機械の破片は汚染物をばら撒いているだけに過ぎない。  この静かの海と呼ばれる荒地の西側で、地球連邦に反逆する一隊が戦闘をしていた。その中で目立つ黄色の一機がダンデライオンの魔女と呼ばれるレミラーラの機体だ。レミラーラは単独行動をしている味方に通信を繋ぐ。 「ミリアちゃん、調子どう?」 この味方、生体メカという謎の機体を使う。生体は生物でありメカは機械なのだから矛盾もいいところだが、実物を見ると何の不思議もなくなるから訳が分からない。 「今、256機に分裂して相手を包囲してるよ」 アメーバは攻撃を受けると分裂するというが、この生体メカはそんな感じ。敵は大隊でミリア機を取り囲もうとするのだが、気付くと大量のミリア機に包囲されて殲滅される。 「ふぇ~、今日もえぐいね~。最初から分裂して行けばもっと楽そうなのに」 それが駄目らしい。1機なら相手は油断するし、自分で自分を撃つと弾が減る。優勢を誇っても分裂し終わった頃に弾切れになるから、相手に撃たせたい。 「最後の一機を撃破。そっちに向かうよ」 「こっちはまだ睨み合いだから、別の敵探して」 ミリア機は訳の分からない方向に飛び去っていく。 こちら、ダンデライオンの魔女の通り名は伊達じゃなくて、相手は警戒して遠巻きにした後逃げて行く。灰色の月の大地に黄色が見えれば危険。今日も戦場は平和だ。
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