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あとで失敗したと思ったのは、家主の連絡先はおろか、名前すらきいていなかったことだ。家の場所もわからなかった。駅の名前は覚えているが、そこからの道がまったく記憶にない。行きは酔っていたし、出るときは仮面を捨てることしか頭になかったからだ。
私はあれからずっと気になっている。果たして家主は、復讐を諦めたのかどうか。
仮面の欠片を投げ捨てた時の、あの晴れ晴れとした顔をみたとき、私は諦めたのだろうと思っていた。この人は復讐から解放されたのだと。しかし、よくよく考えると、家主は復讐を諦めたとは、一言もいっていなかった。あの顔が、迷いを断ち切った――つまり、復讐を決意したという意味だったとしたら……。
たった一晩だけの、そして忘れられない友の復讐劇を、私は時折夢に見る。
ついに見つけた友の仇を、殺す夢を……。
復讐を完遂したときの、あの、晴れ晴れとした顔を……。
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