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サークルの付き合いで、なんの会だかもどんな集まりだかもわからない飲み会に参加して、初対面だがなかなかに気の合う人物と出会った。
そして会を抜け出して家で飲み直そうという話になり、私は二つ返事で賛成した。初対面の相手とそんなことをするのは初めてだったが、不思議と抵抗はなかった。
部屋に上がった私は度肝を抜かれた。
玄関の壁に、一メートルほどの縦に長い仮面が貼り付けてあるのである。
南方の文化圏を思わせる鮮やかな色合いで、その表情は怒っているように見えた。しかし、よく観察すると、泣いているように見えた。いや――笑っている? そのどれもが正しく、どれもが間違っているような。不思議な表情だった。
奇妙な仮面に面食らって立ち止まっていると、その間に奥へ進んでいた家主が早く来いと促してきた。
驚きですっかり酔いが覚めた私は、ああなんでこんなことになったんだっけな、と思いつつ、しかしここで何も言わず帰るのも失礼だと思って部屋の中へ歩みを進めた。
そのほかは、普通の、大学生らしい狭いワンルームだった。怪しげなインテリアは一切ない。安っぽい量産品の壁掛け時計の横には有名なバンドのポスターが貼ってあり、家具も量販店で買い揃えたといった感じだ。適度に散らかっていて、適度に整頓されている。拍子抜けするほど普通の部屋だ。
家主が冷蔵庫から酒を抱えて持ってきたので、二人で乾杯する。
それをがぶ飲みしていると、仮面を見て覚めた酔いも次第に戻った。むしろ、リラックスしてどんどんアルコールが回り、私の体を蝕み始めた。呂律の怪しい舌で、私は玄関の仮面について尋ねた。普段の私であればそんな個人的なことは気になっても聞かない主義なのだが、酔いと好奇心はずいぶん相性がいいらしい。すると家主は私に負けず劣らずの酔いっぷりのまま説明を始めた。
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