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私は夢を見た。
夢の中で私は、ぼろの布切れみたいな腰布を身につけた男になっていた。体中に入れ墨が彫られている。村の戦士の証だ。
私は傷だらけだった。戦いの後だった。
獣の毛皮を腰に巻いたしわしわの老婆が私の姿を認めて歩み寄ってくる。その手にはあの仮面があった。
私は感動に打ち震えながら、その仮面を受け取った。
私は復讐の権利を得た。だからこの後、仮面をつけて日の出とともに目的の人物を殺しにいくのだ。
ひどく嬉しかった。この数年で最も晴れやかな気分だった。
一族の男として人を殺すことは人並みにこなしていたが、それはあくまでも生きるためのことだ。狩りとなんら変わりない。相手が憎くて人を殺したことは一度もなかった。
日の出までには時間があったが、私は眠らなかった。眠れるはずもなかった。そうして空が白みはじめると、高揚した気分のまま、私は走り出した。狼のようにしなやかに鍛えられた筋肉が、風を切って荒野を走る。目的の人物はアチという男だ。
――アチ! 我が怨敵!
奴は私の妻を辱め、殺した。その亡骸を晒し者にして侮辱した!
その場で殺したいと思ったが、一族の掟があったから耐えた。
だがその掟がいま私の復讐を認めた!
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