復讐の顔

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 私は奴の家を襲撃した。奴はいなかった。  奴め、私が復讐者に名乗りを上げたのを知って、卑怯にも逃げたのだ。私の妻を殺しただけでなく、掟が認めた崇高な復讐からも逃げるとは。せめて受けて立ち、戦って散ればいいものを。一族の恥さらし!  私は奴の家を壊した。床下から吐息が聴こえる。粗末な板をはがすと、奴の娘がいた。娘に用はない。私の標的は、アチ。アチのみだ。  私は咆哮しながら家を出た。森の中から悲鳴が聞こえる。奴の声だ!  奴は情けないことに、私から逃げた後、森の中で獣に追われていた。この男は一体、どうして、お前は。  ――アチ、アチよ。  我々は、その昔は仲の良い友人だった。  ともに笑い、ともに狩った。  たがいの妻とも、よく交流した。もちろん妻同士も。いつか妻が子を産んだら、奴の娘と仲良くできればいいなと、そんな話もした。  だというのに、なぜ、我々は、こうなっているのだ。  私は奴によって妻を失い、奴の凶行を恐れて奴の妻は逃亡した。  なぜ、なぜ、なぜ……。  仮面の内側で私は静かに泣いていた。  アチは怯えた瞳で私を見上げている。  夜が明けたとはいえ、薄暗い森の中。その上、この大きな仮面。私の表情は一切奴には見えないだろう。 「アチ!」  感情を振り捨てるように、私は吠えた。アチの顔が歪み、くしゃくしゃになる。  なんて顔をしているのだ、アチよ。  もう見たくない。私は大きな斧を、そこに叩きつけた。
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