待宵

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 ーー今宵も島原には、妓の花が咲く。  そやし、艶やかに月に向かって咲き誇るのは、一部の花だけ。  他の花は、来ない男への愛しさ余って憎らしい想いに心乱され、2つ枕の布団で独寝の夜を過ごす。  そんな夜は、ウチは嫌や。  来ないイケズな男より、ウチだけを見てくれる優しい(ひと)に、大切にされたい。  せやけど、心の何処かで、切望してしまう。  姐さんみたいに、恋い焦がれた(ひと)を思い待ち続ける、切ない宵を、過ごしてみたいと。  ーーそやし、音次姐さん。  ウチ、姐さんが思ってる程、賢い子ぉやおへんえ?  この先、いつか姐さんを悲しませてしまうような事をしてまうかもしれへんねや。  せやから姐さん。  早よ藤さんと、幸せになってな。  姐さんの笑顔が、ウチは大好きやから。  せやから、どうかウチに横恋慕、させんでや。  大好きな大好きな、  ウチの自慢の、  音次姐さん…
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