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「お婆ちゃん、夕飯前にお爺ちゃんお風呂に入れちゃう?」
台所に向かって声を掛けると
「いい、いい、身内とはいえ嫁入り前の娘に、お風呂や下のことはさせられないわ。ご飯の後で私が入れるから」
と答えが返ってくる。
いいのかな、そういうのが重労働だろうに、と思っていると、
「大丈夫よ。お爺ちゃん、ある程度自分のことは出来るの。私は湯船で溺れないか、見張るのが仕事だから」
と言いながら、細打ちの冷製うどんを運んできた。
「その代わり、お風呂が終わったら休ませてもらうわ」
「わかった」
お風呂が終わると、祖母は本当にさっさと布団を敷いて寝てしまった。
「何も気兼ねなく、ぐっすり眠れるって天国よー」
と笑う。
実際、私がここに来た当初の祖母は、目の下に隈があり、表情もどんよりしていたのだが、睡眠時間を確保出来るようになると、目に見えて笑顔が戻ってきた。
祖母が目を覚まさないように、また祖父が起きて動き出すのを聞き逃さないように、テレビのボリュームを極力絞る。
夜の時間、祖父が外に出ていかないよう、起きて番をするのが私の役目だ。
暫くボーッと画面を見ていたが、何となく消してしまった。
祖母の役に立てている…と思うことで、実際には私自身が救われている。
襖の向こうから聞こえてくる祖母の寝息をBGMに、そんなことを考え夜を過ごした。
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