後悔

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これは、 嘘ばかりついてきたわたしの後悔。 見つけてしまったあなたの後悔。 いつか言われたことが頭の片隅にあった。 上手く騙して欲しい、と。 さいごまで騙しきって欲しい、と。 そんなことする気はさらさらなかった。 だって関わりがなければ死んだも同然。実際に生きていようが死んでいようが、確認のしようがないのなら、どちらだって同じことだろう、と。 まして、わたしたちは家族でも恋人でも友人でもない。知人というのもはばかられるし、顔と名前は知ってる…まぁ例えるなら、部活の合同練習で見かけたことのある他校の生徒。くらいなんじゃないかな。それもそれで近すぎるような気もするけどまぁいいや。 けれどどこかで、言われた通りにした方がいいのだろうか、とも思っていた。 綺麗さはあるよな、と。綺麗にする意味もわからないけど。 それでも結局、こうして残してしまっているのだからわたしは本当にどうしようも無いのだけれど、でももし万が一見たのなら、それはもう見た人の自己責任だと思う。うん、きっとそう。 だってわたしは嘘を極端に嫌うのに、嘘ばかりついて来た人生。 せめてどこかに吐き出さないと成仏できなさそうだったから。 だからあの時わたしはあんなに自然と嘘をつけたのだと思う。 唐突にやってきた、ほんの僅かなあの会話時間。 わたしの口から出てきたのは嘘だった。 さらっと、言えてしまった。 きっと疑いはしなかっただろう。 それなりに上手く言えた気がしている。 やっぱり、伊達に嘘つき人生送ってきたわけじゃないってことだね。 「ひとりじゃないんだね?」 という言葉に、明らかに安堵の色が見えた。 それもそのはずだよね。 これでやっと本当に切れると思えたはず。 わたしがちゃんと未来のために動いてると思えたはず。 現実なんてそんな簡単じゃないのにね。 でも、わたしの言葉を信じた方が幸せなのならそうしたらいい。 わたしが居なければ元に戻れることは分かっている。そしてそう信じてる。だってそうじゃなければ意味が無いのだし。わたしが存在する意味が無いのは知っているけれど、消える意味もないのはさすがに少し切ないから。 その過程で、せめてわたしにも未来を持っていて欲しかったんだろう。 終わりしか見てないことを確証してしまったら後味が悪いだろうし。 だから、信じたらいい。 たとえ嘘でも、信じるならそれがその人の中では本当になる。 これは、酷く痛々しいほどに愛しい男からいつか学んだこと。 それが分かっていても、嘘を本当だと信じきることはわたしには出来なかったけど、頼る人も愛する人もいるあなたならきっと出来るよね。 でもさ。 なにが、とは言わないけれど、あなたも相当な嘘つきよね。 わたしとは違う意味合いで嘘をつく。 きっとあなたの嘘は、優しい嘘、なんて言われるもので。 そしてわたしは、それが一番嫌い。 嘘に優しさなんてものは無い。 それが優しい嘘だと言うのなら、思うのなら、それは嘘をついた本人が罪の意識から逃れたいだけ。 自分は完全に悪じゃないと思いたいだけ。 相手を思っている振りをしているだけで、本当は自分を守っているだけ。 そんなやつに、嘘をつく資格はない。 だってそもそも嘘をつくこと自体が身を守るためのものなのだから。それを相手への思いやりにするだなんて烏滸がましいにも程がある。 まぁ…こんなのただの自論だけれど。 これだけ書いてきて一番笑えるのは、信じたらいいとか見た人の自己責任なんて言いながら、実際のところはそもそもわたしに向けられているのは無関心なのだから、そんな心配は全く要らないっていう部分。 それでも、 幸せを願っている。 生きていて欲しいと思っている。 堕ち切ればいいと思ってる。 生死なんて分からないし関係も無いからどうでもいいと思ってる。 全部本当で、全部嘘。 さいごのさいごまで本音100%で話せることも書けることも無かった。 ほんとうに。 嘘と後悔ばかりの人生だった。
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