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しばらくそうしていたが、一分も経たないうちにカルロはのっそりと起き上がった。
「……このままじゃ本当に死ぬ。終わらせないと死ぬ。レオンを探さないと」
ブツブツ呟きながら、来た時と同じくフラフラとカルロは歩いていく。すると突然立ち止まり、勢いよくロレンツォを振り返った。まるでホラー映画で化け物にうっかりと見つけられた主人公の気分だ。
「な、なんだ、まだ何かあるのか」
驚きで言葉に詰まるロレンツォに、カルロは妙に一語一句はっきりとした口調で言った。
「早く来ないと、死んでやるって、レオに伝えて」
殺してやる、ではなく死んでやるなんて、とんでもない脅し文句だ!とは口に出さず、ロレンツォは「オーケー」とだけ言う。もちろんレオナルドに伝える気はない。
もしレオナルドがカルロのところへすぐに向かったら、カルロはああ言ったが、実際はレオナルドの足を掴んで無理心中を達成しそうな気がする。
カルロが去ると、騒がしかった本部の下階がいつものように程よい雑音で満たされ始める。それに加えて降り出した雨の音が耳に心地良い。
ロレンツォは改めて座り直し、紙巻に火をつけた。なかなか面白いものが観れたと、さっきのカルロの姿を思い出していると、今度はエントランスの方がざわつき始めた。
何事かと咥えタバコで廊下の手すりから見下ろすと、示し合わせたようにその中心にいた人物も振り返った。
「チャオ〜、ロレンツォ」
片手をヒラヒラと振りながら、レオナルドがにこっと笑った。綺麗な顔にのせられた笑みにつられたのはロレンツォだけじゃない。それが気に入らず、ロレンツォはすぐに大きな声で返した。
「早く来い、マイボス!待ちくたびれたぜ」
くるりと背を向け、煙草を手近な灰皿に押し付けた。下階から聞こえてくる声は一斉にカポの、というよりレオナルドの帰りに喜び、弾んだ構成員たちの挨拶と労いの言葉に変わる。ロレンツォは口の中で「クソが」と呟いた。
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