『la chiacchierata.』(ロレンツォ×レオナルド)

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 幹部やカポのスケジュールを掌握しているカルロが知らないはずだった。  サンドロ顧問(コンシリエーレ)からの呼び出しで、急な会食になったらしい。レオナルドは疲れているのか、ジャケットもグローブもそのままに執務室の脇にあるソファに座ると、ごろんと上半身を倒した。  それを服飾を扱うロレンツォが黙って見ているはずがない。入眠体制に入ったレオナルドを無理やり起こすと、ジャケットを剥ぎ取りグローブを外し、カフスを折る。最後に指輪を填めなおしてやり、ロレンツォはやっとレオナルドを解放した。  されるがままになっていたレオナルドは急に支えがなくなり「うわあ」と間抜けな声を上げてソファにまた倒れた。瞼は完全に落ちている。 「おい、寝るなよ」 「目ぇつむってるだけ」 「それを寝るって言うんだよ、このバカ(ヴァッファンクーロ)」  レオナルドの側近だという青年の淹れたやけに美味いコーヒーをすすりながら、ロレンツォはまた「寝るな」と忠告する。そうしてやっとレオナルドは起き上がったが、瞼は依然として閉じたままだ。  これは何を言っても起きない、とロレンツォは判断し、せめて寝る場所だけは移動させてやろうと立ち上がる。腹の上で手を組んで完全に動く気のないレオナルドの、背中と膝裏に腕をまわし持ち上げようとしたが、ピタリと動きを止めた。 「レオナルド、少し痩せたか?」 「ん?」  レオナルドは薄く目を開け、自分を覗き込むロレンツォをぼんやりと見つめ返し、首を傾げる。どうしてそんなことを聞くのか、自分の体を服の上から確かめてみると、ベストの脇やスラックスに若干広めの余裕ができていた。 「言われて、みれば……?」  前から筋肉がつきにくく、痩せ型ではあった。それもあってレオナルド本人も気づかなかったのだろう。ロレンツォはため息を吐き、呆れたようにレオナルドを見下ろした。 「自分のことだろ、それくらい把握しろ」 「まあまあ、最近忙しかったから」  レオナルドはヘラっと笑ってまた横になろうとしたが、ロレンツォが「寝るな」と腕を掴みそれを阻止した。 「サボり魔が何言ってんだ、隙ありゃしょっちゅう抜け出しやがって!首輪でも付けてやろうか」  ロレンツォの手がレオナルドのネクタイを外し、シャツの一番上のボタンを外す。 「それは勘弁……って、おいおい、ロレンツォ!」  今まで何をされても止めなかったレオナルドが、ついにロレンツォの手首を掴み、睨みつける。ロレンツォがレオナルドの首にネクタイを巻き付け始めたのだ。  しかしそれは首を絞めるためではなく寸尺を測るためで、ロレンツォは測ったネクタイの長さを目測しながらニヤリと笑った。 「安心しろ、俺の名義で作りに行ってやる。ブランドのリクエストはあるか?」 「ねえよ、やめろ!」  レオナルドはロレンツォの手を叩き、ネクタイが床に音なく落ちる。それを拾うと、ロレンツォはレオナルドの横に座り、再びその顔を覗き込んだ。 「首輪はメリダに相談するとして、心当たりはあるか?」 「あ?何が?てか相談するな」  吐き捨てるとレオナルドはロレンツォからネクタイを奪い取り、寝室へ着替えに行った。その後ろをロレンツォがついて行く。
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