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遡ること数時間、役員会前の会議が終わったすぐ後、レオナルドはロレンツォの顔に怯えながらも執務室に帰りつき、山となっている書類にサインをしていた。
その頭の中はもちろん、ロレンツォと次に会うときは殴られないようにしなきゃとか、メリダはなんであんなことを言ったんだろうとか、いくら何でもこの書類は多すぎる!とか、そんなことを考えていたが、それとは別の、特に頭の冷静な部分でレオナルドはあることに頭を悩ませていた。
その"あること"は一見すると当然のことだが、組織にとっては大きな痛手となることで、悩んだ結果、今日の幹部会議で伝えたのだ。さらにその会議に寝坊して遅れてしまったのは"あること"について一人で探っていて寝不足だったからだ!
寝不足で頭が重いが、"あること"について考えるともっと重くなる。しかもこの後の役員会議のことを考えると、頭が重すぎて床に崩れ落ちそうだ。思わずどんよりとした溜息を吐いた時、扉が数回ノックされて、返事も待たずに開かれた。
『何でどいつもこいつも俺の返事を待たないのかなあ』
声を荒らげるほど怒ってはいなかったが気にしていることは確かで、レオナルドは愚痴を零した。
『それは失礼をしたね。ただ少し急を要することなんだ。話をしてもいいかい?』
入ってきた男は少しも失礼とは思っていないような態度だったが、皮肉を言うように笑っているわけでもなく、疲れすぎて表情が固まっているわけでもない。ただ真剣にレオナルドを見つめていた。
『……何だよメリダ。そんなに畏まって』
場を変えるために立ち上がろうとしたレオナルドをメリダが手で止める。レオナルドが座り直したのを確認してメリダは話し始めた。
『さっきの会議のことなんだけれど、あれは本当かい?』
さっきの会議のこととわざわざ曖昧な表現をするのは、この筆頭幹部であるメリダも直接口に出すのを憚るようなことだからだ。しかしレオナルドはメリダが何を指しているのかはすぐに分かり、肺の底から溜息を吐いた。
『はあ……ザンネンながらね。何なら証拠もあるぜ』
苦々しい顔のレオナルドはボロボロの封筒を机の上に無造作に置いた。そう、その中身こそがレオナルドが頭を悩ませている"あること"で、そして寝坊の原因だ。
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