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「次の配信はこっちの工房をって言ってたじゃない?ここでアカとアオがフラワーボックス作ったら?」
「や……無」
「いいんですかっ!?」
俺の否定はアカのめちゃくちゃ嬉しそうな声に掻き消される。
しかも、キラキラの期待しまくりの目を向けられて断り辛い。
「ほら、写真で色んなバラを撮ってくれたから……こっちでは花を使った商品をちゃんと見てもらってもいいんじゃない?」
そうやって見せられたのはさっき姉が見ていたスマホ。
真っ赤なケースの画面いっぱいに映っていたのは濃いピンクで香りも強い“芳醇”の綺麗に花開いた姿だった。
「これは匂いに釣られて!……で、こっちは一目惚れ」
テーブルに置かれたそれをアカがスワイプすると、次に出てきたのは落ち着いた赤い色の“オクラホマ”の咲き始め。
どっちも花にピントが合わされて存在感が凄い。
「ね!めちゃくちゃ綺麗でしょ?」
「てか、蒼一は?お前、何撮ってきた?」
アカがアオの方を向くと、じっとテーブルの上の花材を見ていたアオはスマホを取り出してアカに渡す。
真っ黒なケースのスマホを受け取るとアカが慣れたように操作した。
「ヤベ……カッケぇ」
「本当!!凄いっ!!こんなのどうやって撮るの!?」
アカが息を呑むと、姉も覗いて感嘆の声をあげる。
俺にも見せられた画面。
それは水滴に映るバラだ。
しかも、そのバラは“ロマンティックエンジェル”という優しいピンク色をした大輪のバラで、花の形も美しくてトゲも少なくて扱いやすい俺もかなり好きなバラだった。
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