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「……うわっ!!」
近くに気配を感じて跳ね上がる。
ペコッと頭を下げられてもバクバクと心臓はうるさくて、俺は胸を抑えたままイスから落ちかけた。
なのに、それを後ろから支えられて更にパニック。
俺はすっぽりアオに包まれて動けなかった。
シャツ越しに感じる体温と息遣い。
……ヤバい。マジで死ぬかもしれない。
「や、えっと……あの、あ、あり……」
お礼さえまともに言えなくてどもりまくる。
「……あ」
頭がクラクラするほど全ての血が沸騰したような錯覚を覚えた頃、それだけが耳元で聞こえてやっと解放された。
男相手にこんなドキドキして……俺はどうしちゃったんだ?
人と関わらなさ過ぎてもう男でも女でも人を感じるだけで何もかもパニックなのか!?
こんなやけに胸が高鳴るなんて……おかしいだろ?
いや、推しなら普通か?
考え過ぎか?
思っていると、真横に顔があってヒュッと息を止めた。
まるで全身心臓にでもなったかのようにドクドクと速く強い音も鼓動も感じる。
「……耳」
「ふひぃっっっ!!」
不意に耳を触られてよくわからない声が出た。
耳元であんな声を直で聞いて、しかも触られるとか……死ぬ。
「……大丈夫?……ですか?」
息も絶え絶えになってきて机の上に突っ伏したのに、まだアオは俺の背後に居るまま話してくれて涙が滲んだ。
ヤバい……男だとか女だとかじゃない。
推しが尊過ぎて……死ねる。
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