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「こんな感じ……だけど、どうですかね?」
工房に籠もって作業をしているとそんな声が聞こえてきて、顔を上げた。
「素敵っ!!開き始めって綺麗だよねぇ」
姉にスマホを渡しているらしく画面を見て姉はうっとりしている。
それを横から一緒に見ているアカ。
アオの姿は見えなくてちょっと残念に思いながら作業をするテーブルに戻る。
どんな写真なのかは気になるが出て行く勇気はない。
配信を見れば見られるだろうし……それまでの我慢だ。
加工したプリザーブドフラワーを並べて薄い水色のギフトボックスを手にすると、俺はイスに座ってピンセットを持った。
だが、すぐに視線を感じて顔を上げる。
「っ、うぉっっっ!!」
イスを倒してしまって大きな音が響いた。
テーブルの反対側には身を屈めてじっと見てくるアオが居て、また目が合ってしまう。
「何事!?」
音に反応したらしく姉も工房のドアを開けて入ってきた。
「おい、蒼一。お前、何でここに居んだよ?」
その後ろからアカも来て呆れた声を出す。
「ここ……好き」
たったそれだけ。
でも、ズキュンと胸に刺さってしまった。
“好き”……推しのそんな言葉。
「まぁ、ここいい匂いする……ってこれプリザーブドフラワーですよねっ!!」
アカが机の上にある花を見て急にテンションを上げた。
「あ、そ……そう……」
「ヤーベ!めっちゃ感動するー!」
どもる俺とは反対に目を輝かせるアカ。
「あ!じゃあさぁ!」
それを見て姉はまだオアシスも入れていないボックスを手にした。
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