推しの声

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 一人遅れて朝飯を食べて作業をしにまた工房に戻った俺はそのままジャム作りを再開した。  レモン汁と合わせておいた花びらを鍋に移す。  砂糖を入れてゆっくり煮詰めていくと甘いバラの香りが充満していった。 「ん、いい色……」  スプーンで掬ってその綺麗な赤を見つめていると、ふと左側に気配を感じる。  いつの間に居たのか俺の横には身を屈めてジャムを覗き込んでいる男。 「なっ!!」  驚いて後退ってビタンと棚にくっつくと、勢いのあまり上からバサバサと包装紙だのリボンも箱ごと落ちてきて頭に直撃した。 「っ痛ぇ……」  呻くと、近づいてきた男が俺の頭に触れる。 「なっ、ちょっ……はぁっ!?」  咄嗟にその手を弾いて俺はワタワタと謎に暴れた。  どうしてここに人が居るのかも、こいつが誰なのかも色々わかんなくて言葉にもならない。  無言で男はその行き場を失くした手を見つめてとりあえず散らばった包装紙とかを拾い集めた。  俺が手から吹っ飛ばしたスプーンも拾うとキョロキョロと辺りを見る。 「だ、誰だっ!?」  その後ろ姿に叫ぶと男はゆっくりこっちを見た。  長めの前髪の間から見える真っ黒な瞳と目が合ってしまってどうしたらいいのかわからない。  こんな近くに他人が居ることも久々過ぎてパニックだ。だが、 「…………すいません」  この声は……!!
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