12人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
第28話 クリフとその後 (終話)
俺とクリフは、とある店の中で話をしていた。
「まさかねぇ。こんな事になるとは予想もしてなかったよ。」
クリフが言った。
クリフは冒険者になり、頑張っているようだった。
Bランクになったんだとか。
凄いのか俺には分からない。
がっちりとした体形になったクリフは貫録がある。
確かに護衛してもらうには信頼出来そうだ。
剣士って言ってたっけ。
攻撃魔法も使えるらしいけど。
腰には重そうな剣がぶら下がっている。
「城に勤めだしたし、貴族になったから順調に出世するのかと思ったのに。」
クリフは続ける。
「まさか辞めて、店を始めるとは・・。想像つかんかった。」
城をやめる時は王様に必死に止められたっけ。
10年ほど城に勤めたお陰で、お金は貯まっていた。
俺もロココも散在するタイプじゃなかったのが良かったのかもしれない。
「俺はやっぱりさ、また店をやりたくなったんだよ。今回はお店の内装にお金かけられたから思いのまま作れたし、お客もひっきりなしに来るんだよね。」
「オーシャン・アルフレッドの名前は有名だからな。」
「俺は、店をやりながらのんびり暮らすよ。」
「のんびりって・・無理だと思うぜ?」
バタン!
ドアを開ける音が聞こえた。
「店長!回復ポーション10個ほど追加でお願いします。」
最近雇った店のバイト、カイルから声をかけられた。
「のんびりできると思ってたのになぁ。」
「は~いちょっと待ってて。」
バタバタと奥の部屋に駆け込む俺。
まだ在庫があったはず。
箱に10個入れて店の外へ持って行く。
「じゃ、またな。」
「またいつでも来てくれ。」
クリフは店を出た。
「まあ、オーシャンだからな。らしいって言えばらしいけど。」
オレは呟く。
冒険者になってから、ぼくがオレになったんだよね。
不思議なもので。
「依頼終わらせてくるか。」
店を出て振り返る。
店の看板には大きな文字で書かれた店名があった。
” 聖水の雫 ”
『ポーションのある雑貨店・ご要望何でも承ります』
****
「オーシャン帰り遅いわね。」
ロココは家で帰りを待っていた。
「きゃはは・・」
バタバタと室内を走り回る子供たち。
ミウは女の子、金色の髪で瞳は青空の色、髪を横にふたつに結んでいる。
ライは男の子、茶色の髪に薄い茶色の瞳
ミウは4歳、ライは6歳だ。
ロココの周りをぐるぐる回っている。
屋敷には赤いバラの花が咲き乱れている。
外で過ごすにはいい季節だ。
もうじき日が暮れる。
「早く帰ってこないかな。」
子供たちとオーシャンの帰りを待つ穏やかな日々。
いつまでもこんな日が続くといいな。
最初のコメントを投稿しよう!