3章 始まりの出会い。

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 ーー…広大なロスヴァスの森を歩いてから3日目、拙者達は茂みや木々の中を順調に進んでいた。 「さてと、そろそろ休憩しよう。」 「おう。」  手頃に開けた場所で拙者は仲間達に言ってその場に座ってそれぞれ休む。  休んでいる間に拙者はハクタクに声をかけてあるものをリュックから出させる。  それは黒く細長い表面が凸凹に荒削りした石で半分は葉っぱや木の実を擦って作った絵の具で緑色に塗られている。  さらに石には水に浮く為に木の板が蔓で巻きつけてあった。  それと小さな底がまあまあある木皿と革で作った水筒も一緒にハクタクから受け取る。 (二胴貫とハクタクの収集が上手く合致してくれたおかげだな。)  受け取った道具一式を見て拙者はそう思った。  村を出る為の話し合いが終わってから拙者はハクタクの家にある彼の収集物の山に向かった。  その山は木と石に別れて積まれていたのでその内のハクタクが山の近くや川に底引き網で収集した彼の珍しいという見分が入ってはいる石の山に向かった。  そこで拙者は可能性に賭けて1つ1つ手に取り二胴貫の鞘に当てていった。  当てては手を離し石が落ちれば別の石を手に取り当ててを繰り返す。  そして日没直前まで続けたところでとうとう当たりを引いてみせたのだ。  鋼の鞘にくっ付いたまま離れない黒い石を。  ハクタクとリープが鞘にくっついた石を不思議そうに見るのをよそに拙者は内心喜んだ。  ついに“方位”を得られたのだから。  手に入れたその石をなるべく細く浮きやすいように石に擦り付けて削り木の板に蔓で結び付ける。  その磁石の針を水の張った木皿に浮かせ真昼の太陽に針の先端が向くのを確かめる。  太陽に向いた針の先が北であるということを示す為に木の実や草を擦り潰した絵の具で塗り方位磁石の針を作ったのだ。  拙者は木皿に革で出来た水筒から水を入れてから作った方位磁石を浮かべて動きが止まるのを待つ。  少しの間左右に揺れてから方位磁石が止まったのを見て北を確認する。  それから地図を見てどれくらい進んだだろうか推測を立てる。 「結構歩いたがよぉ。まだ抜けねぇのか?」 「仕方ないですよドゥルト。この森は本当に広過ぎますからね。今はただ北を目指して進んでいくしかありません。」 「その通りだ。あと少ししたら、日が暮れるまで歩くからな。」  拙者とハクタクが言う通りロスヴァスの森はとても広い。  それは地図の絵にも大きく森の絵が描かれてるので北へ真っ直ぐ進めたとしても森からでるのはきっと最長で一週間以上はかかるだろうと拙者は覚悟していた。  方向を確認し休憩を終えた拙者達が再び森の中を進んでいると前方から水の流れる音が聞こえてきた。  その音に早足で向かうと案の定ロスヴァスにあるのとは違う清流が流れていたので拙者達は3日ぶりに水浴びをして身体を洗い流した。 「はあ~…気持ちいい。」 「飲み水も減ってましたから助かりましたね。」  今使っているのと予備の水筒の中身を入れ替える為にハクタクが水を汲んでいた時だった。 「…ん?」 「どうしたハクタク?」 「ザウバー、血の匂いがします。」  ハクタクの言葉で他の皆は動きを止めて表情を変える。  ハクタクは1人で狩猟をしてきた経験があるので匂いと音には敏感になっているので遠くからでも感じれる才能があるとドゥルトから聞いていたし、彼と少しの間狩猟してみて間違いないと実感している。 「場所はわかるかハクタク?」 「おそらくこの川の上流です。いきますか?」 「行ってみよう。もしかしたら同族かもしれん。」  水筒に水を得てから拙者達は川の上流を目指して駆け出した。  ロスヴァスの村へと流れてくるリザードマンの中には森を抜けて辿り着いた者もいるので怪我をしているのならば救助してあげたい。  すると上流へ進んでいく中で遠くから激しい水音が近づいてきて木々の間を抜けた時にその正体が現れた。  ドドドドッ!と断崖絶壁から勢いよく落ちてきて水しぶきを上げる滝が4体の前に姿を見せたのだ。  滝の高さは目測で8mくらいのそこそこの規模ではある。 「…だ、誰か~!助けて~!」  滝壺の音にかき消されそうになりながらも上の方から聞こえる子どもの声と血の匂いに皆と共に拙者は顔を上げる。  そこには滝の右側の崖から生えていた細木に拙者だけがよく知る人間の少年が両手で掴まってぶら下がる態勢でいながら助けを求めていた。 「…なんだありゃあ?猿か?」 「猿にしては頭以外に毛がないですね?それに何か纏ってるような?」 「それに私達と同じ言葉を喋ったわよ?お猿さんは喋ったりしないわ。」  初めて見る人間に対しての3体は各々感想を述べる。  それを聞いてから拙者はまあ当然かと一息間を空けてから言ってみた。 「もしや、あれが外の世界にいる人間族というものではないか?」  自分も初めて見た風に言って様子を見れば3体は少し沈黙してからほぼ同時に尻尾を立てて驚く。 「なんと!?あれが人間という種族ですか!?」 「おお!まだ3日しか経ってねぇけどついに人間族を発見したぜ!」 「だとしたら助けないと!せっかく出会ったのにあの高さから落ちたら大ケガじゃ済まないわ!」  これまた各々の反応を見てからリープの言葉に頷くとすぐに救助する為に少年がいる真下へと走って拙者は移動する。  立っている地面は固くあそこからここに落ちれば例え背中からだろうと少年ではまず命を落とすことだろう。 「おーいそこの少年!」 「だ、誰ー!?」  滝の音にかき消されないようにザウバーは大声で少年に話しかける。 「下を見なくてよい!すぐに助けるから目を閉じて腕に力を入れることだけ考えろー!」 「わ、わかったから早く助けて~!」  とりあえず踏ん張ってもらえるよう伝え少年の返事を聞いてから拙者は指示する。  まずドゥルトとハクタクには拙者の近くでいつでもキャッチできるように待機してもらう。  2体が準備できたところでリープに呼び掛け真上を指差しながら頼む。 「リープ、あそこまで蔓か枝を伸ばせるか?」 「任せて。」  立ち位置を入れ替えるように拙者とリープは移動すると崖に生えてる蔓を見つけて杖をそこに当て彼女は唱える。 「森よ、木よ、草よ、我が友よ。友である我が声を聴きたまえ…声を聞きし友よ。さすれば我に力を貸したまえ…!」  言い終わると共にリープはコンとノックするように杖で蔓を叩いた。  叩かれた蔓は緑色に淡く光り出すとまるで時間が急激に進んでいくかのように上へ上へと太く伸びていく。  これも森術使いの成せる魔法であり、成長していく蔓を見て拙者はある程度成長したところで軽く跳躍しその蔓を掴んで一緒に上へと登っていった。  一方少年の方はと言えば腕が震えてきて今にも落ちそうになっている。 「もう少しだ!頑張れー!」 「くう…無、理ぃ…!」  少年までの距離があと少しというところで握力が限界を迎えてしまった彼は木から手を離してしまう。  空中で情けない声を上げながら地面へと真っ逆様に落ちようとする少年だったがすぐに動きが止まった。  なぜなら落下に勢いがつく前に拙者の尻尾が少年の身体に巻きついて受け止めたからだった。 (ふぅ…人間だったら助けられなかったかもしれぬな。)  尻尾の中で気絶している少年を見ながら拙者は今のリザードマンの身体に感謝した。  尻尾で少年を抱えたまま拙者は蔓を伝って降りると少年を地面に寝かせた。 「こいつが人間か?随分と小せぇな?」 「多分ですが子どもの部類ではないでしょうか?」 「かもしれないわね?それにしても人間って鱗がないのね。頭には毛があるのに。」  ふにふにと寝ている少年の頬を指先でつついて感触を確かめながら言うリープ。  まあそれが人間だからなと内心思ってしまう。 「どうしますザウバー?助けたし後は放っておきますか?」 「いや、子どもならば目覚めまるまで待とう。場合によっては今日はこの場を野宿としよう。」  さすがにこのまま立ち去ってもこの子が自力で無事に帰ってくれる保証はない。  万が一獣にでも襲われては夢見が悪くなる。  だからここは待機して様子見する指示を出す。  こちらの指示にわかりましたとハクタクが返せば他の2人も行動に移る。  ドゥルトと一緒に拙者が周囲を警戒しハクタクとリープは少年が目覚めるまで傍で待機する形を取ってから感覚的に数分が経ったあたりだった。 「……ぅ…んん…。」 「あ、皆、人間の子どもが起きそうよ。」  少年が頭を動かして声を出したのでリープが知らせてくれたので囲む形で様子を見る。  すると 少年の瞼がピクリと動いてからゆっくりと開いた。 「こ、ここは…。」 「目覚めたか少年。無事で何よりだ。」 「あ…助けてくれてありがとうござい、ま……。」  意識がはっきりしてきて思い出したかのようにお礼を言う少年だったがこちらを視界に入れると固まってしまう。  その様子に嫌な予感がしたがものの数秒で予感は的中した。 「う、うわあぁぁぁぁ!?リザードマンだあぁぁぁぁ!?」  声を上げて驚いた少年は慌てて逃げようと立ち上がるも左足首にきた痛みに転んで尻餅を着いてしまう。 「急に動かない方がいいわ。擦り傷は治したけれど私の森術(しんじゅつ)では捻挫や骨折は治せないから。」 「ぼ、僕をどうする気だ!?僕なんか食べたって美味しくないぞ!?」  少年の言葉に外のリザードマンは人間を食べることもあるのかと考えてしまうが、多分親にそう吹き込まれたのであろう。  外のリザードマンが本当に人間を餌にするのかは知らないがここにいる我々4体は人肉なんて全く興味がない。  少年の言葉に拙者を除く3体はキョトンとしてからすぐドゥルトが笑い出す。 「ガァハッハッハ!悪いが俺の好きなのは焼いたベリザリガニと太った魚だ!おめえなんか美味しく見えねぇしな!」 「ひぃ~…!」 「これドゥルト。子どもを怖がらせてはならぬ。」  余計な言葉で悲鳴を上げてしまう様子を見て、ドゥルトへ一言言ってからは拙者は腰を抜かしている少年に近づいて片膝を着いた。  目の前まできたこちらに少年は目に涙を浮かべながら震える。  改めて少年を見ると歳は小学6年生から中学1年生くらいで容姿は栗色の髪に格好は薄い生地で作った簡素な上下とベストと革の靴を履いておりテレビで見た中世の農民ぽかった。  それと少年の反応と言動を見る限り人間にとってやはり話に聞く通りリザードマンは怖い魔物の扱いなのだろう。 「少年よ、まずは聞いてくれ。我々は君を食べる気もなければ手にかける気もない。端っからそうならば君を助けはせんだろう?」 「あ…。」  伝えた言葉に少年はハッと気づかされて身体の震えが止まってみせる。  だから微笑みかけ少年が落ち着きを取り戻し始めたのを見計らってさらに話す。 「まずは自己紹介といこう。拙者の名はザウバーと申す。仲間と共に旅を始めたばかりの者だ。君の名は?」 「グ、グラン……。」 「グラン君か。グラン君はどうしてあんなところに?」 「その、皆と一緒に薬草を取りに行って……。」  優しく問いかけてあげれば少年グランは話してくれた。  どうやら街で売る薬草を採りに大人達と一緒に来たはいいがあまり多く収穫出来なかったらしい。  そこでグラン君は森の奥にならまだ採ってないのがあるかもしれないと進んでしまい気づいたら1人で奥へと入ってしまった。  奥へ進んたおかげでたくさんの薬草を見つけて採取したまではよかったグラン君。  だがそこで運悪く一頭の狼に出くわしてしまう。  グラン君は薬草を投げつけてまで頑張って逃げ出したのだがさっきの崖まで追いつめられ咄嗟に下に生えてた木に降りてしがみつく形で隠れた。  追ってきた狼は投げつけられた薬草と実の臭い、さらに滝の音と水しぶきでグラン君の匂いが消され見失ったのかしばらくして去ってくれたらしい。  グラン君はやり過ごしたと思ってほっとし上を覗こうとした。  その時にバランスを崩してぶら下がる形になってしまったということが拙者達が見つけるまでの経緯であった。 「それは災難であったな。」 「どうしよう。早く帰らないと皆心配してるだろうし…。」  せっかく落ち着いたと思ったが今度はシュンとしてまた泣きそうになるグラン君。  そんな少年に拙者は彼の頭に優しく手を乗せて言った。 「よし、ならば君を住処まで連れていこう。」  拙者の言葉に他の皆が驚く。  ここまできた以上、グラン君を親元まで帰してあげようと思いまだ不安の残る眼差しで見つめてくるグランに軽く頷いてみせてからリープ達へと振り向く。 「皆もよいな?これはきっと、龍王様が我々がいかに本気かを試す試練かもしれぬ。ならば望むところであろう?」 「ええ、私は構わないわ。」 「おう!同族助けならぬ“人間助け”のスタートだな!」 「リーダーはあなたですから私は従いますよ。」  3体からの返事を聞いてからまた頷いて決定するとグランに背中を向けておんぶする態勢を取ってあげた。 「さあグラン君、拙者におぶさってくれ。君の住処に帰ろうぞ。」 「う……うん!」  返事をしてくれたグラン君が人間より太い拙者の首に腕を回しておぶさってきたのを感じれば立ち上がり背負ってみせる。  この身体だと人間の子どももリザードマンの子どもも大して重くないものだ。 「ではグラン君、君の住処はどこかな?」 「えっと、迷った時はこの川をずっと下っていきなさいって言ってた。」  だから奥に行く時も狼に追いかけられた時も川から離れなかったんだとグラン君は滝から続く川を指差し説明してくれた。  そういうことをちゃんと覚えているのはきっと教えた者が熟練者なのだろう。  なので彼の言う通り拙者達は川の流れに添って歩き出した。  こうしてるとつい息子や孫をおんぶして家路に着いた日を思い出してしまい口元が自然と綻ぶ。 「嬉しそうねザウバー?」 「ん?やはり子どもをおんぶするというのはよいものだなと思ってな。」  何気ない一言にリープはえっ!?と尻尾を立てて驚くと急に顔を赤らめてしまった。  なのでどうしたと聞けば彼女は尻尾を忙しなく揺らしながらもなんでもない!と返しそっぽを向いて先を歩いていく  リープの反応に少しして意味を察すると一応夫婦なのに先ほどの発言はうっかりだったと拙者は苦笑いした。  しばらく川を下ってから日が傾いてきた頃、ハクタクが前方を指差して言った。 「皆さん見て下さい!見たことない大きな建物が見えますよ!」  ハクタクの声に皆が脚を止めて指差した方を見ればリープとドゥルトも声をあげる。  まだ少し遠いが木々の間から見えたのは壁は恐らくレンガ造りで屋根は木製で赤く塗られておりガラスの窓もいくつかあり、煙突もある二階建ての立派な一軒家だ。  隣には同じ造りの平屋建ても一軒あり反対には木製の小屋が大中小といくつかあった。さらに川の向こうには水車小屋もあり流れに合わせて水車が回っているのが見えた。  そして目測だが全体を囲むようにして木製の柵も設けられていた。 (あれは、もしや牧場か?)  家の構造や配置、柵の造りからして拙者はグランの住むところが牧場なのだと理解した。 「あ、あれです!あれが僕の家です!」  建物を確認したグランが元気を取り戻し指差して言ってきた。  グランの言葉を聞いてやはり彼の親が牧場の関係者なのだと確信した。  だとしたらこれはさっそくチャンスが来たのではと考える。  牧場ならばここからでは見えないところに畑もあるだろうし何より畜産の知識はロスヴァスの食糧問題解決に役立つはず。  しかも森近くの牧場とあれば国の干渉も弱いだろう。 「おお!ならあれが人間の家か!もっと近くで見ようぜ!」  ザウバーが考えている間にドゥルトは森を抜けたことと初めて見る人間の建物に意気揚々として前に脚を動かす。  まさにその時だった。 「…っ!止まれドゥルト!」  感じた視線と殺気に声を荒げてドゥルトに言った直後、風切り音が鳴ってすぐにドゥルトの前の地面に1本の矢が突き刺さった。 「うおっ!?」 「皆茂みに隠れよ!」  地面に突き刺さった矢を見てドゥルトがバックステップで退く。  拙者はすぐに指示をして皆へ後退して近くの茂みに身を隠してもらう。  茂みの中から改めて建物を確認すると一見した時は気づけなかったが平屋建ての建物の影から藁の屋根がある物見櫓(ものみやぐら)が確認出来た。 (しまった。自警団がおったか…。)  時代が中世に近いのならば自分の身は自分で守れがよくある話で、これほどの牧場を警備する存在がいてもおかしくなかったと気づけなかったことに拙者は反省する。 「グラン君、ここを警備しているのは誰かな?」 「え、えっと…ピノットさんです。ウッドエルフの。」 「ウッド、エルフ…?」  孫のやってたゲームでエルフという言葉は知ってるがウッドエルフと何か違いがあるのかと考えていれば向こうから声が聞こえてきた。 「そこにいるリザードマン!命が惜しいなら立ち去りなさい!さもなければ容赦しないよ!」 「あ、今のがピノットさんです!ピノットさんは牧場の自警団の団長なんです。」  はっきり聞こえてきた女性の声にグランがピノット本人だと特定してくれた。  どうやらピノットはウッドエルフという種族の女性らしい。  しかし声色から察するに結構若い気がするが本当に自警団のリーダーなのか?。 「どうするザウバー?こうなったら俺達の強さを見せつけるか?」 「そんなことをしたら私達の目的である交流の道が途絶えてしまいます。ここは仕方ないですが少年だけ向かわせた方が安全だと提案いたします。」  事態に出されたドゥルトとハクタクの意見に気持ちを切り替える。  まずは今の状況を打開しなくてはいけない。  リープの視線を感じながらも腕を組み瞼を閉じて熟考に入る。  まずドゥルトには悪いが彼の意見はきっぱりと却下させてもらう。  ここで争ったり抵抗をしてみせたら交流など夢のまた夢だ。  ならばハクタクの意見かと考えればそれも却下だ。  グラン君1人を帰して自分達が立ち去ってはせっかくの交流への足がかりを失ってしまう。 (とならば、答えはひとつ…。)  短い間で考えをまとめて頷くと3人を見据えてから口を動かす。 「皆、拙者に考えがある。それにはグラン君、君の力を借りたい。」 「ぼ、僕ですか?」  自分を指差して首を傾げるグランに頷いてみせてから拙者は自分の考えを伝える。  提案に皆がそれで大丈夫なのか?と心配される。  これが天の試練ならばやれるだけのことをやるだけだ。  心中でそう覚悟を決め茂みの隙間から見える物見櫓の方を向いて拙者は言う。 「さぁて、“一芝居”と参ろうかの。」
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