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冷静になってくると、今の現状は響にとって恐怖でしかない。
見知らぬ男と、どこかのホテルで一夜を過ごしたのだ。
成は無言のまま部屋のカーテンを開けた。
大きな窓から差し込む光はとても眩しくて、そして都会の景色を美しく見せてくれた。
「急だったし、俺は泊まる予定じゃなかったから、ツインの部屋が取れなくてさ」
なんの話かと響は焦る。
自分の問いにまだ答えてもらっていない。
「んー。本当に分かんない?」
成はテーブルに近付き、置いてある眼鏡とマスクを着けると響に顔を向けた。
「く、黒澤さんッ!」
見た事がある顔だった事で、やっと響も気が付いた。
ほとんど会う事のない、デザイン部の黒澤成だとやっと分かった。
しかし、メガネとマスクを外した顔を見たのは初めてだった。
「俺たちも隣の席で打ち上げやってたんだよ」
成はマスクを外すとクスッと笑った。
「俺の素顔見るの初めてだったか、新人ちゃん」
響は無言で何度も頷く。
まさか眼鏡とマスクを外した成が、目が潰れるほどイケメンだった事に、響は成が直視できなくなった。
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