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最悪のパターンだったんだと、響は顔面蒼白になる。
「本当に申し訳ありません!もちろんスーツは弁償します!」
「んー。スーツ代の心配より、ここのホテルの宿泊代気にした方が良いよ」
響はハッとして、部屋の中を見渡した。
大きな窓からの大都会、丸の内の風景。
部屋の中の調度品。
素晴らしいスプリングのダブルベッド。
一度も泊まったことがない、とてもじゃないか泊まる必要性のないホテルのベッドの上で響は固まった。
「週末でその日に直ぐ取れるホテルなんてなかったし、これは仕方ないことだと諦めてくれ」
確かに、全ては自分が悪いのだ。
調子に乗って飲みすぎて、記憶を無くして眠りこけた自分が全て悪いのだ。
「お、おいくら、でしょうかね?」
恐る恐る響は尋ねる。
「15万ぐらいかな」
15万と聞いて、響は卒倒しそうになった。
まだ入社1年目にして、1ヶ月の給料が全て吹っ飛ぶ。
出たと喜んだボーナスも、正直、寸志程度だ。
「……仕方ありませんよね。自業自得だ。うん、良い勉強になりました」
灰になりかけている響を見ながら、成はため息をついた。
「ホテル代は半分俺も負担する。他にもお前をどうにか送る手段があったかもしれないが、このホテルに連れて来た責任も有るし」
「良いんです。全て私が悪いんです。あの、お酒くさいんで、シャワー浴びて来て良いですか?」
もう何も考えたくなかった。
こうなったら残りの時間は、15万を取り返そうと思った。
「うん。そこのドアがバスルームだから」
響はよろよろしながらバスルームに入って行った。
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