仕事の出来る男?

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相良主任のアシスタントは本当に楽しくて、響は第2企画部が過去に作った商品をまとめた資料を読みながら、社員食堂でランチを食べていた。 成の作品の写真を見て、成に支払う借金の事も脳裏に浮かんだ。 響はごく平凡な家庭で育ち、大学も私立は金銭的に無理で都内の公立大学を卒業した。 お給料から毎月家に5万円を入れ、奨学金も支払っている。 響の手取りは20万程度で、定期預金や生命保険などの毎月の支払いを引いた残金から5万円を成に返済しても、お小遣いを我慢すれば、なんとか生活は出来ると思った。 「渡瀬さん」 声を掛けられて、響は斜め上に顔を上げた。 そこには南海雄がトレーを持って立っていた。 「早瀬さん、こんにちは」 響は笑顔で挨拶する。 「ここ、一緒に良い?」 「もちろんです!」 響に向かい合う形で、南海雄が椅子に腰掛けた。 「昼休憩まで熱心だな」 開いている資料を見て南海雄は微笑む。 「私、ちゃんと企画の仕事するの初めてで、ちょっと浮かれてます」 浮かれてると言う言葉に、南海雄はキョトンとしたが笑い始めた。 「あはは。良いね、その浮かれてるって。普通は勉強してるとか、カッコつけたりしない?」 「もちろん勉強してるのもありますけど、今は嬉しくてはしゃいでるって言うのが本心だから」 響は真っ直ぐな目で南海雄を見る。 南海雄は響に優しい笑顔を向けた。 「嘘が付けないタイプなんだね」 「それもありますかね。嘘が下手っていうのもあるんですけど」 それが響の本音だった。 「なるほど。あ、でも社食使う人なら、昼に誘えば良かったな。そうしたら俺のデザイン見てもらえたし」 「社食バンバン使いますよ。だって、定食が300円で食べられるんですから!使わないなんて勿体無い!それにすっごく美味しいしッ!」 「そうそう。使わないとソン」 響と南海雄はお互いに掛け合って笑う。 「じゃあ、明日、誘っても良い?」 「はい!早瀬さんの作品、とっても見たいです」
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