逃げ切りたい男との出会い

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「落ち着いた?つーか、お前独り言大きすぎ。丸聞こえだったぞ」 響がバスルームから出て来たので、成は響をじっと見た。 髪の毛はきちんと乾かしてあるが、化粧は全くしていないので、すっぴんだと幼く見えるものの、メイクしている時の顔と全く変わらないのも少し驚いた。 逆にすっぴんの方がより可愛いと思った。 「は、はい。色々ご迷惑お掛けしてすみませんでした」 独り言が聞かれた事で、響は余計に恐縮する。 「それはもう良いよ。俺が勝手にお節介しただけだし」 「いえ、でも……」 自己嫌悪で、響は返す言葉がない。 「でも、貴重な時間を無駄に使わせて、本当にすみませんでした」 響は深々と頭を下げて謝罪する。 「確かに、俺の時間をお前に使わせたのは事実だな」 響は返す言葉がない。 「これに懲りたら、もう酒は控えるんだな」 確かに成の言う事はもっともで、響は反省の意を表そうとした。 「はい。日本酒は辞めておきます。あんなに飲みやすいと思ってませんでした」 響の言葉に、そりゃ良い大吟醸は飲みやすいだろーと成は思った。 「ん?日本酒だけかよ」 日本酒と断定したことに成は引っ掛かり尋ねると、響はハッとして顔を上げた。 「あ!えーと、そのッ!」 焦る響を見て成は大爆笑する。響は冷や汗が吹き出した。 「お前、その余裕の発言どっから出てくんのよ。普通は嘘でも辞めるって言うだろうが」 成はベッドに仰向けになって大爆笑する。 「す、すみません!嘘、つけなくてッ!」 どんどん墓穴を掘る響に、成は笑いが止まらない。 「分かった、もう、良い。お前と喋ってると、想像の斜め上行くんで何も言えなくなる」 成は落ち着いてくると笑うのをやめて、ムクリと起き上がった。 「腹減ったな。朝食もお前もちな」 「は、はいぃ」 仕方ないと響は諦めるしかなかった。
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