第三十三話 いくつになっても女子会

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第三十三話 いくつになっても女子会

どうしよう… 昨日私ほんとに南井さんと… キ、キスをしてしまった!! 翌朝、土曜日でランチ営業はお休み。 朝ゆっくりと眠り目が覚めると、酔いも覚め徐々に冷静になる頭で、昨夜の記憶がよみがえる。 彼氏以外の人と…しかも… 一応彼氏の仕事上の知人ですよ! それに政治家さんデスヨ つきあうにしてもハードル高くありません?? いや、そもそもちゃんとつきあうっていう話にもなってないし。 口説かれはしたけど…ひとめぼれだとか… 私も好きだとか言ってないし… ってことは私彼氏以外とも平気でキスする軽い女と思われたりしてないかな?? そもそも最近浩輝さんとデートもキスもしてないしっ それはそれでやばくない?? 事実上自然消滅してる? あーっハッキリさせたいっ というわけで、翌日店休日の日曜日に、緊急女子会を招集。 タイミングよく忍もさとこも空いていた。 「えっと、みんなに相談したいことがあって…」 咲希は事の経緯を報告した。 「えっ!?」 ふたりとも驚きの様子。 しかし忍のリアクションは、その後あーやっぱり…と変わっていった。 「あの日私も会社の人といたんだけど、なんかいい雰囲気だと思ったんだよね〜、そのお客さんと」 それを聞いて咲希も追求する。 「そういえば忍も!あの松木さんっていう人と、いい感じだったよね??」 「えっ!?そんなこと…」 正直過ぎて顔に出ている。 「えっ、ずるいふたりとも私の知らないところで、なんか恋しちゃってる??私ナンテ怖いくらいに何もないのに??」 甘いスイーツをほおばりながら、恋愛談義に花が咲く。いくつになっても女子会の恋バナは楽しい。 「でも咲希の彼氏さんがその場にいなくてよかったね。絶対修羅場になるよね。なんか粘着質っぽいもん」 さとこの言葉に、皆うなずく。 「だけど絶対自分が振られるわけないと思ってるフシがあるから。あの自信一体どこでもから来るんだろう」 「お金持ちは変な自信があるからね。お金に女も仕事もついてくるって思ってるんだよ」 世の中の酸いも甘いも噛み分けてるだけに、妙に説得力があリますね、さとこさん。 「それより!気になるのは忍だよ!今まで恋の話なんか聞いたことなかったのにっ。そもそも秘密主義だしっ」 「私のことより優先順位は咲希のほうだよ、どうするの?その南井さんって人とつきあうの?でもお店は柴田さんの名義で借りてるわけだし、なんか気まずいよね」 「そうなのよ!別れたくても仕事上関わらないわけにいかないし…そうなるとできるだけ距離を置くしかなさそうだけど…ああいうタイプって逆上したら怖そうじゃない?だから怒らせたくないし…浩輝さんと別れるならお店辞めさせられると思うのよね。あの人、仕事にプライベートを持ちこまないような大人じゃないもん」 「毎月100万くらい上納するなら許してくれそうだけど」 「そうだよね~さとこの言う通りだと思う。だけど現状ギリギリの営業でまだ利益なんてほんのちょっとで、そんなの現実的に無理だし」 ふぅ、 思わずため息がもれる。 「だけど人の気持ちなんて、愛情なんて変わるもんだし。どんなに愛し合って結婚までした人でも、年月が過ぎれば破綻することもあるでしょう?誰にも止められないよね、感情のすれ違いは」 「おや?忍さん、何か悟ったようなことを言っておいでで。もしかして!?松木さんって既婚者なの??」 「えっ!?忍そうなの??」 咲希もさとこもまさかというような表情で忍をみた。真面目な忍に限ってまさかそんな…という気持ちで。 「そ、そうだけど…だからアレよ。私の場合好きとかそんなんじゃなくて、職場の憧れの上司?みたいな。ちょっと仲良くなれたらうれしいかなー、みたいな」 「例え忍がそう思っていても相手がどう思ってるかよ!どうするの??松木さんが本気で好きとか言ってきたら」 「そんなの絶対ないない、咲希とかさとこみたいにかわいい人ならともかく、ワタシなんて今さら誰かに気に留めてもらえることなんてないって。この歳になるまで誰ともつきあったことないんだから…」 「そんなの若い男は見た目にこだわるかもしれないけど、男もある程度年齢重ねたら癒やしを求めるのよ。年齢若いのがいいとか見た目の好みとかじゃなくて、一緒にいて居心地いい女と過ごしたいって思うのよ。それに忍はかわいいのよ、誰にでも分け隔てなく優しくて素直で笑顔を絶やさなくって。そんなのなかなかできることじゃない。私もさとこも忍のこと大好きなんだから、もう自分を卑下するのやめようよ」 うんうん、と咲希の熱弁にさとこもうなずく。 「うん、そうだけど…」 ふたりの気持ちはうれしかった。 でも、そうは言ってもやっぱり私は咲希やさとことは違うんだ。 40歳にもなって処女だし、初めて本気で好きになった人は既婚者だし。 かわいいなんて、だれから見てもかわいいきれいな咲希やさとこに言われても、ほんとは虚しいだけ…。 だから、軽々しくそんなこと言ってほしくなかったりする。 友達に対して内心そんなこと思ってるなんて、私性格悪いよね。 口には出さないが、一見楽しそうな女子会の中で、笑顔の裏で、闇落ちに苦しむこともあるのだ。 南井と咲希と柴田の三角関係 既婚者松木と忍 それぞれの恋の行く末やいかに… f60a68e9-ead6-48c9-a805-8803419247bd
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