第四十七話 灰と煙

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第四十七話 灰と煙

なんかもう疲れたな… 立ち昇る煙を見ながら、忍は思った。 人は所詮、死んだら焼かれて煙になり、 天にかえるだけ。 骨以外何も残らない。 むなしい それなのに、生きている間は 物や愛情に執着し 叶わない望みにしがみつき 悩み、苦しみ。 それが人間というものなのか。 何も望まず 求めずにいれば どんなにか楽に生きれるだろうに。 称賛や報酬といった わかりやすいかたちで 物欲を満たし 承認欲求を満たし。 それなのに もっともっとと 欲望は果てしなく。 まるであの空の太陽をつかもうとするくらい 手に届かない未来を 望んでいるのかもしれない。 もう、いいや 何もかも 投げ出したい気分だ。 何も考えたくない 何もしたくない 抜け殻のような私は なぜ今生きてるんだろう 言いようのない喪失感 誰も私のことなんかみていない 世界中でひとりぼっち そんな気持ちにかられる そんなことはない 頭ではわかっているけど どうしょうもない孤独に襲われ どんどん闇に堕ちていく 壊れそうな心 燃え尽きたのか 張りつめていた糸が切れ 白い砂の 蟻地獄の巣穴にのまれていく。 たすけて そんな声も出ない もがく力もない 浮上できない なんでこんなに 人生辛いんだろう どうあがいたって 何も変わらない 何も報われない 愛する家族を失った悲しみは果てしなく 心を完全に凍結してしまった。 私いま どんな顔をしてるんだろう わからない 誰かに話しかけられても 言葉が頭に入らない 私なんで ここにいるんだろう ここで何をしてるんだろう どうしたって もう時間は戻らない あの夜のことを悔やんでも お父さんは戻ってこない ただそれだけ… なみだは枯れ果て なすすべもなく 無気力に 時は流れていった。
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