第六十四話 一日中ダラダラしていたい

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第六十四話 一日中ダラダラしていたい

現代人は、働き過ぎではないだろうか。 一般的な会社勤めをしていれば、 朝早く起きて満員電車に揺られ出勤し 夜まで仕事して帰ったら食事の準備や 家族や子供がいればお世話もし 寝るのは夜も更けてから。 疲れて何もしたくない日もあるだろう。 帰ってメイクも落とさず寝落ちしてしまい 翌朝肌のくすみに後悔するのが40代。 すぐには回復できない。 肌も、疲労も。 ある日の日曜日。 さとこは部屋でゴロゴロしていた。 両親はドラッグストアの抽選で当たった日帰りバスツアーに出かけており、留守。 老後同盟メンバーに連絡を入れると、 忍は婚約者松木と挙式の準備に出かけ、 咲希は驚くことに、柴田の葬儀だという。 まさかあの柴田さんが亡くなるなんて… さとこは一度しか直接会ったことはないが、 憎まれっ子世にはばかるのことわざを無視し 癌が見つかってからあっけなくこの世を去った。 余程人望がなかったらしく葬儀を行う近親者もいないそうで、結局南井が知り合いの寺でこじんまりと執り行った。 人は何のために生まれ、何のために生きていくんだろう… 畳の上に転がり、天井を見上げさとこはぼんやり、考えていた。 難しいことは抜きにして、 今日はとにかく ゴロゴロしたい 随所で気を遣うさとこは 精神的にも疲れやすい。 それに加え、今年の夏は酷暑。 プールやクラブ活動の子供たちを見守っていると、体力的にもキツイ。 世のお母さん達は夏休みになると、 3食食事の用意だけでも大変だ。 仕事しながらとかだと ほんとひとりの時間なんてなかなかないだろうな… 尊敬します。 ゴロンゴロン 抱き枕を抱え、クーラーで冷えた部屋にひとり寝っ転がる。 あー… 気持ちいい… ノーメイクの部屋着姿 誰の目も気にしない空間。 母親が作り置きしておいてくれたおにぎりを食べ 大あくびでまどろむ。 一日中ダラダラしたい時ってあるよね 好きなことだけしてさ 暑い中出かけたくないし。 このあとなにしよう アイス食べて 溜まってるドラマみて お昼寝して あー… なんか 楽しくなってきた 普段はきっちりしているさとこさん その反動か極端に だらけることがある。 人はそうやって バランスをとるのかもしれませんね。 誰にも邪魔されず 願望通り好きなことができるっていうのは 最高の贅沢かもしれない。 高級リゾートで 豪華な食事をいただく休日も そりゃあ素晴らしいものでしょう。 だけど今の私には この時間こそが 至福のひと時なのです。 好きなだけ食べて 寝て 本能に抗わない生活。 自由って、最高じゃん 蝉の声を聞きながらまどろむ朝。 昨日までの嫌なことや 明日からの仕事のことを考えず 今にこころある時 それが自然な あるがままの生きる姿なのだと 悟ったさとこさんなのでした。
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