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前にも、こんなことがあった。
薄ぼんやりとした、記憶だけれど。
そう、私がヒーリングを習い始めてわりとすぐ。
小さな金髪の男の子。
執事だという男性から呼ばれた。
まだまだ、力のない私。
不安から、断ろうとした。
でも、是非と言われて、あまり人にしたことがなかった魔法を使った。
あの時、男の子は木から落ちて頭を打っていた。
気絶していた状態。
私は、魔法を施した。
数回、10回………ついに男の子は、目を覚ました。
その彼は、こう呼ばれていた。
【アギルト様】と。
ああ、今何故気づいてしまうの。
あの時の、小さな男の子は立派になった。
ヤンチャしてばかりだと言われていたのに、勉学に励み、戦術を習って。
今、こうして勇者様として慕われている。
死なないで、アギルト様。
あの時よりも、強い回復魔法。
私だって、あの時より強くなったのだから。
と、その時。
《飛んで火に入る夏の虫とは、お前たちのことだ……!》
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