ヒーリングしか使えない魔法使いはお嫌いですか?

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「こんにちは。ミーアさん」 「こんにちは。お初お目にかかります。アギルト様」 何度かお見かけはしていた。 横を通り過ぎていくだけの時もある。 それでも、振り向いて見てしまう程に美しい後ろ姿。 勇者様の、香水のかおり。 ふわりと漂って、私の鼻いっぱいに広がった。 こんなに近くにいる。 信じられない。 上手く挨拶できただろうか。 「そんなに緊張しないで」 ああ、その微笑みが眩しい。 「あ、あの……アギルト様。とても嬉しいことなのですが、ただ……」 口が勝手に動く。 役に立てない、なんて本当は言いたくないけれど。 真実を知らないであろう、アギルト様に嘘はつけない。 「回復魔法のスペシャリストでしょう?」 「え……」 スペシャリスト?私が? そんなこと、初めて言われた。 アギルト様はニコリと笑う。 「攻撃魔法を習得してくれだとか、前線に立てとかは言わないよ。ヒーリングだって立派な魔法だからね」 「アギルト様……」 胸が熱い。 優しい言葉に、私は泣きそうになるのを堪える。 「お供をさせてくださいませ」 アギルト様のお役に、少しでも立てるのなら。 「ありがとう、ミーアさん。改めてよろしくね」 穏やかで、甘い声音。 「ありがとう、ございます」 アギルト様、益々お慕い申し上げます。
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