ヒーリングしか使えない魔法使いはお嫌いですか?

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旅立ちは、十と四日後。 私は、魔法を更に勉強した。 学はあまりないけれど、それは学校を退学させられたから。 使えないレッテルを貼られても尚。 攻撃の魔法を覚えようとした。 学ぼうとした。 それでも、出来なかった。 『何でこんな簡単な魔法が使えないんだ』 言い分はわかる。 みんな使える魔法。 でも、私にはどうしても使えない。 魔法が出ない。 唱えても、魔法が出ない。 焦る気持ち、悔しさ、悲しさ。 ない交ぜになって、頭がぐちゃぐちゃになる。 涙は流さなかった。 私は、落ちこぼれなのだと自分を卑下した。 『ミーア』 そんな私に、おばあちゃんが優しく笑う。 『ミーアには、人には出来ないことをする、できる強さがあるんだよ。だから、苦しまないで』 『おばあちゃん……でも、私は……』 『自分を責めてはいけないよ。ミーア』 あなたに、酷いことを言う人はいる。 でもね、だからこそ、あなたは味方にならなきゃ。 自分自身を嫌いになるなんて、悲しいことだからね。 おばあちゃんのその言葉で、私はまた頑張ろうとしたけれど。 結局、魔法の試験で合格が出来ずに退学させられてしまった。 悲しかったけれど、私は家で魔法を勉強した。 『ミーア。回復魔法を極めてみない?』 お母さんの提案。 私は頷く。 お母さんと、おばあちゃんは色々な書物を私に見せてくれた。 優しく教えてくれた。 『そう、すごいね!ミーア』 『出来た……!ありがとう』 『うん。その調子だよ。だけどね、ミーア』 特大魔法は、連投してはいけないよ。 『何で?』 『ミーアの体力を削ることになるからね。命に関わることがあるんだよ』 『だけど、アギルト様を護るために使ってもいいかな?』 『……身を挺して、勇者様を護ることは美徳ではないんだけどね。だけど、いざとなったら……三回までだったら大丈夫。それ以上は、やめておくんだよ』 『うん』 おばあちゃんと約束した。 そのあとは、小さな魔法だけで済んでいた。 旅立ちの日まで、もうあんまり時間がない。 私は、魔法本を読み始めた。 【回復魔法のスペシャリストでしょう】 アギルト様の言葉が、じんわりと心に沁みていく。 アギルト様…… 私、頑張ります。
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