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声に振り返ると、アギルト様がいた。
アギルト様の横には、……そう、ナイト様といったはず。
アギルト様のボディガードの方もいる。
「思ったよりも、早く着きましたので……」
私がそう答えると、アギルト様は微笑む。
その表情の中には、少しの苦しさが見えた。
「そうですか。俺も、一緒にお祈りしていいですか?」
「はい」
アギルト様は、私の真横に来てお祈りを始めた。
つい、見てしまう。
睫毛が長い。
鼻も高い。
いけないのに、神聖な場所で。
前に向き直り、私はお祈りを再開する。
うるさい心臓の音を宥めるように。
数分は経っただろう。
隣で、衣擦れの音がした。
アギルト様が動くおと。
私も目を開ける。
でも、直ぐには動けない。
頬に熱が集まって、火照っているから。
「先に出ていますね」
アギルト様の声。
「は、はい!すみません、直ぐに行きます」
神さま。
アギルト様をどうかお護りください。
私の……想い人をどうか。
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