ギルドの理

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*  街の西端──王宮の真隣、教会からは迷路の道を歩いてすぐのところにギルドは建てられていた。名を聖ギルド。その名に相応しく全面真っ白な石造りの建物は宮殿のようで、権力を誇示するように光り輝いていた。  クラーラとシリルが先導し開放された扉をくぐると床一面が大理石で埋め尽くされている。  正直に感嘆の声を漏らしたエミリアの横でアレンはもはや1日分の労働を終えたような疲れ切った顔をしていた。 「どうしかしましたか? アレンさん」  暗い表情に気が付いたのか、心配そうにたずねるクラーラにアレンは首を振った。 「何でもないです」  ここへ来るまでにエミリアの質問攻めにあい疲れ果てたとは言えなかった。一つ、クラーラとはどんな話をしていたのか。一つ、クラーラと距離が近かったのはなぜか。一つ、クラーラと話しているときは優しい目をしている──などなど。  エミリアとクラーラではほぼ性格は真逆なのだから対応も変わるだろ、と言うと睨み付けられてしまったアレンは大人しくエミリアの話に付き合うしかなかった。 (なんてことを愚痴ってもしょうがない。それにここは言ってみれば敵の総本山だ) 「それで、スキルを入手すると言っていたが、具体的にどうするんだ? 俺達はギルド員じゃないぞ?」 「その通りです。ですから──」  クラーラは柔らかく微笑むと、いきなりアレンとエミリア2人の手を掴んだ。ひんやりとした感触が暑い中歩いて火照った身体を冷ます。 「……何だ?」 「クラーラさん! いきなり何を!」  2人の疑問に全く答えることなくクラーラはギルドの受付へと連れていくと真っ白な長机の前に2人を並べた。  ウェーブのかかった髪の長い受付の女性の張り付いたような笑顔が上がり、パッと花のように色付いた。 「あっ、クラーラ様!」 「おはようございます。ディアナ。例の件で参りました」 「例の……すると、こちらのお二方が」  ディアナと呼ばれた女性がアレンとエミリアの顔を見つめた。どこか神妙な面持ちで。 「そうです。アレンさんとエミリアさん、2人は今から我が聖ギルドのギルド員です」 「……はっ?」 「えっ!?」  アレンとエミリアはお互いの顔を見合い、間に挟まるクラーラの横顔に視線を向ける。  クラーラの顔はいつもの通り穏やかに微笑んでいた。
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