ギルドの理

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* 「いやーこんなにおかしいことはないよっ!!」  シリルはお腹を抱えて笑い声を上げていた。 「……な、何があったの?」  ルームから出てきたエミリアが疑問の目をアレンにぶつけるも、アレンは肩を竦めて答えようとはしない。 「だって、選んだスキルは【速読(スピードリーディング)】に【万能探索(スペシャルサーチ)】、戦闘と関係ないものばかりだったんだよ!?」 「【俊足(ホース)】と【気配殺し(ノン・サイン)】も取っただろう。戦闘でも使える」 「そりゃそうだけどさ! 暗殺者(アサシン)にでもなるつもり!? スキルポイントが少なかったらまだわかるけどさ! 神官も目を丸くするくらい膨大にあって、まだ残りもたくさんあるのにそれだけで終わらせるのはおかしいって!!」  なおも笑い続けるシリルの様子に、事情をまだ知らないエミリアの頭にはたくさんの疑問符が浮かんでいた。 「いいんだよ、俺は言った通り新聞記者になるんだから。……それでエミリアの方はどうだった?」 「ああ……私? 記憶がないからほとんど何も情報はなかったけど、適性は剣士、あとは指揮官らしいわ。本当かどうかはわからないけど……」 「へー指揮官! すごいじゃん!」 「でも、指揮官って部隊を率いるような職業でしょ? 私、まだ何も力がないのに人を導いたりするなんてとてもできないと思うんだけど」  エミリアの口から軽いため息が出された。大きな碧い瞳が伏し目がちにアレンの顔を見上げた。 「珍しく弱気だな」 「む……なによ。初めてのことなんだから当たり前でしょ?」  腕を組むとエミリアは口を尖らせる。 「誰かさんみたいに人の気持ちを気にせず冷静でいられるなら、指揮官に向いてるって思えるかもしれないけど!」 「いや、俺は無理だな」  アレンはあっさりと認めると微笑んでみせる。 「な、なんでよ? これまでの戦い、全部言っていることは正しかったと思うけど?」 「たぶんだが、指揮官に必要なのは正しさではない。より重要なのは感情だ。みんなを奮い立たせるような、勇気づけるような行動が取れるかどうか。それはエミリアにこそあるんじゃないか?」 「──っつ! ちょっ……」  視線が外れると、エミリアの顔はみるみる赤くなっていった。 「急に恥ずかしいじゃないっ! ちょっとシリル! 私もスキルもらいに行っていい!?」 「あーいいよ〜そしたらアレン、ちょっと待ってて〜」  シリルは手をひらひらさせると、なぜか逃げるように走り去るエミリアを追っていく。 (エミリアが指揮官はベストだな。俺にはない人を引き付ける魅力もある。それにシリルの精霊魔法、クラーラとモニカの神聖魔法。他にもギルド員クラスの実力を持つ人間が何人も──) 「あの、ここにいてもなんですし下に戻りませんか?」  隣にいたディアナが申し訳なさそうに首を傾げた。 「あ、ああ。」  アレンは頭を搔くとディアナの後ろについていった。 (くそっ、俺は何を考えてる? 俺が戦いの配置なんて考えてもしょうがない)  思考とは裏腹に、階段を降りるアレンの頭の中では、闘技場を抜けてから今までの出来事が駆け巡っていた。 (エミリアに会ってから急に騒がしくなったな。だが──) 『あなたの力、私が使わせてもらうわ』 (いいだろう。ギルドを変えるために力を尽くす)
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