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「んんー? いい、ですよ」
「襲ってもか?」
「……ん……くろせ……さん、なら……いい……」
広い胸板に頬を摺り寄せ、思ったままをつぶやく。
彼の体温が心地よかった。もっと彼を感じたいと思ってしまった。
でも、息を呑んだような振動が伝わってくる。
(黒瀬さんはなにをそんなに驚いてるのかしら?)
そう思うものの、思考を進める前に、私は眠りの沼に沈んでいった。
「瑞希、起きたら覚えとけよ!」
黒瀬さんの叫びを遠くで聞きながら。
***
目が覚めたら辺りは暗かった。
すーすーという誰かの寝息が頭の上から聞こえる。
そして、私はその人にしがみついていた。
「んー?」
寝ぼけ眼で身じろぎしたら、暗闇の中、黒瀬さんがぱちりと目を開けたのが見えた。
そして、いきなり私の顎を掴み、顔を近づけてくる。
「瑞希、ちゃんと覚えてるだろうな?」
低い声で問いかけられた。
でも、急に言われてもなんのことだかわからず、きょとんとする。
そんな私の唇を親指で辿って、黒瀬さんは淫靡に笑った。
「襲ってもいいんだろ?」
息がかかる距離でささやかれて、かぁっと頬が熱を持つ。
そういえば、寝る前にそんなことを言っちゃったかも……。
まだ眠りの残るぼんやりとした頭で考える。
「ちゃんと言ったことに責任とれよ」
私が覚えているのがわかったようで、ニヤッとした彼は私に口づけた。
(え?)
唇を押しつけられて、口の周りにチクチクと無精髭が当たる。角度を変えてついばまれる。
(黒瀬さんとキスしてる!?)
驚きにはっきり目が覚めた。
彼は吸いついてきて、離れるときにふにっと唇を挟むように食んだ。それがとても気持ちいい。キスでこんなふうに感じてしまうなんて初めてだった。
ほっと息をついた隙に、黒瀬さんの舌が入ってきて、またそれに翻弄される。
キスに夢中になっていたら、彼の手が今度は私の胸をまさぐった。
Tシャツの薄い布を通して彼の手の感触や熱さえも感じる。
胸の先端がTシャツとこすれて、快感に立ち上がった。
すぐに直接さわってほしくなって、身をよじる。
「ん……んぅっ、んん……」
我ながら、鼻にかかった甘い声をあげてしまう。
こんなに快楽に弱いはずはなかったのに、彼の手は魔法のように私をとろけさせた。
「瑞希……かわいいな」
黒瀬さんは私のTシャツを捲り上げて、胸を露出させた。恥ずかしくて隠そうとした手を握られ、シーツの上に縫い留められる。彼の口端は上がり、笑みを浮かべてはいるが、その目は情欲にぎらついていて、余裕のなさそうな表情がさらに私の官能を煽った。
求められてると感じるとうれしくなって、私は彼の手を握り返した。
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