黒い法服

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 世界最大の版図をもつR帝国。その皇太子が来日することとなり、まだ開国したばかりの小国である日本としては、大国に対して失礼のないようにと、そのもてなしや警備に頭を悩ませていた。  都田たちが勤務する滋賀県警でも、大勢の警官たちが警備の任務に就くことになっていた。  そもそも、なぜR帝国の皇太子が日本に来るのか。  時は1891(明治24)年。  皇太子は自国の海軍艦隊を率いて、海路でウラジオストクを訪問。  その途中に、来日することとなったのである。  艦隊には、ギリシアの王子も同乗しており、一緒に訪日することになっていた。  ウラジオストク訪問の目的は、シベリア鉄道の起工式に出席するためである。  極東の地であるウラジオストクまで、陸路で行くことができないわけではないが、当時としては困難を極めた。  だからこそ、シベリア鉄道の開通がR帝国の国家的課題となっていた。  日本は開国してようやく文明国の仲間入りを果たしたばかりの新興国であり、R帝国にとって日本という国は未知の国であった。その視察を兼ねての来日でもあった。  R帝国の艦隊は、日本に到達。  皇太子一行は、鹿児島、長崎、神戸、京都を訪問。  京都では、皇太子のために季節外れの五山送り火を焚くという、異例の歓迎ぶりであった。  皇太子は、翌日、滋賀県の琵琶湖を観光することになっていた。
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