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小島は、大審院(最高裁判所)院長として裁判官たちを招集し、次のように語った。
「君たちが着ている法服の色は何色だ。そう、黒だ。なぜ法服が黒なのか、分かっているはず。黒は、他の色に染まることがない色。それは、法に関わる者の心構えそのものでもある。相手がたとえ国家権力であったとしても、相手がたとえ海外の大国であったとしても、我々はただひたすらに法を遵守し、法に基づいて職務を行うのみである。それでこそ、司法の独立が保たれるのだ。今一度、君たちが着ている法服を見てみよ。もう一度、問う。君たちの法服は何色だ。他の色に染められてはいないか。その法服と、己の心に問うてみよ!」
* * *
事件発生から十六日後という異例の速さで、裁判は結審した。
都田には、刑法第二百九十二条、謀殺未遂罪(殺人未遂罪)が適用された。
法廷に、裁判長の声が響き渡る。
「主文 被告人を無期徒刑(無期懲役)に処する」
大審院は、国家権力や外国の圧力に屈することなく、司法の独立を守り、法に基づいた判決を下したのであった。
世界中の国々は、日本国は罪刑法定主義を貫いた近代国家であると認め、大いに称賛した。
一方、R帝国は武力による報復や領土の割譲要求、金銭による賠償要求を行わなかった。
その寛大な対応もまた、国際的に大いに評価されたのであった。
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